「とろみ剤って、どのくらい入れればいいの?」

「濃くすれば安全だと思って、たっぷり入れているんだけど…」

在宅で介護をしている方から、よく聞く言葉です。とろみ剤は誤嚥予防にとても有効なのですが、正しい使い方を知らないと逆効果になることがあります

この記事では、管理栄養士・JSDR認定士(摂食嚥下リハビリテーション学会認定)として、学会の公式基準に基づいたとろみの正しい使い方を解説します。


まず結論:「濃ければ安全」は間違いです

多くの方が誤解していますが、とろみは濃くすればするほど安全なわけではありません

濃すぎるとろみは、
口の中に張り付いて飲み込みにくい
喉に残りやすく、むしろ誤嚥リスクが上がる
まずくて飲まなくなる → 脱水のリスク

その方の飲み込みの力に合った「ちょうどいい濃さ」を見つけることが大切です。


とろみの3つの段階を知っておきましょう

日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」では、とろみを3段階に分けています。

段階名称見た目の特徴飲み口の特徴対象
レベル1薄いとろみスプーンを傾けるとすっと流れ落ちる口に入れると広がる。細いストローで吸える嚥下障害が比較的軽度の方
レベル2中間のとろみとろとろと流れる。カップを傾けると全体にコーティング明らかなとろみ感。「drink」という表現が適切。ストローで吸うのは抵抗がある嚥下障害がある方の基本
レベル3濃いとろみスプーンを傾けても形状が保たれる。フォークの歯の間から流れ出ないまとまりがよいが送り込むのに力が必要。スプーンで「eat」する感覚重度の嚥下障害の方

最初に試すなら「中間のとろみ(レベル2)」から始めるのが一般的です。


とろみ剤の正しい作り方

基本の手順

  1. 飲み物をコップに注ぐ(お茶・水・ジュースなど)
  2. とろみ剤をはかって加える(製品の説明書通りの量を守る)
  3. すぐに15〜20秒しっかり混ぜる(ダマの原因になるので素早く)
  4. 1〜2分待つ(この間にとろみが安定する)
  5. かたさを確認して提供する

よくある3つの失敗と対策

失敗①:ダマができる
→ 原因:混ぜ方が弱い、後から加えた
→ 対策:とろみ剤を先に入れ、加えたらすぐ素早く混ぜる

失敗②:しばらくするとゆるくなる
→ 原因:アミラーゼを含む食品(お粥・とろろ等)との組み合わせ
→ 対策:でんぷん系食品にはゲル化剤タイプを使う

失敗③:固まりすぎる
→ 原因:入れすぎ
→ 対策:製品の目安量を守る。最初は少なめに試して調整する


とろみ剤の種類と選び方

市販のとろみ剤には主に2種類あります。

タイプ特徴向いている用途
でんぷん系比較的安価。透明感が出にくい汁物・お茶・水など一般的な飲み物
キサンタンガム系透明感があり見た目がきれい。温度変化に強い幅広い飲み物。現在の主流

現在はキサンタンガム系が主流で、スーパーや薬局でも購入できます。


知っておきたい注意点

薬をとろみ水で飲む場合

OD錠(口腔内崩壊錠)をとろみ水で飲むと、薬が吸収されにくくなる場合があります。薬の種類によってはとろみ水での服用が適さないものもあるため、薬剤師や医師に確認してから変更してください

とろみ水でも脱水に注意

「とろみ水は飲みにくい」と感じる方は、飲む量が減りがちです。必要な水分が摂れているか、尿の色や量も合わせて確認しましょう。


現場から一言

施設で働いていると、「とろみを濃くしているのに誤嚥性肺炎を繰り返す」という方が時々います。詳しく見てみると、濃すぎるとろみが喉に残りしばらくして気管にはいってしまった可能性や飲みにくくて水分を避けるようになり脱水になっていることがあります。

とろみは「濃ければ安全」ではなく「ちょうどいい濃さが安全」。これが嚥下の専門家の共通認識です。


まとめ

・とろみは濃ければ安全とは限らない。濃すぎると逆効果になることも
・とろみは学会分類で3段階(薄い・中間・濃い)。まず中間から試す
・正しい作り方:先に混ぜて、1〜2分待つ
・ダマ・ゆるみ・固まりすぎの失敗には原因と対策がある
・薬との相互作用に注意。薬剤師に相談を


著者:とり子(管理栄養士・JSDR認定士)/現在、高齢者施設勤務
参考:日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2021

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