相談者

母はちゃんと食べているのに、最近なんだか元気がありません。気のせいでしょうか。

とり子

その気づきは大切です。食べていても、低栄養が進んでいることがあります。家族が気づけるサインを一緒に見ていきましょう。

高齢の親が毎日ごはんを食べていると、「栄養は足りているはず」と思いますよね。けれど、年齢とともに食べる量が少しずつ減ったり、食べるものがかたよったりして、気づかないうちに栄養が足りなくなることがあります。これを「低栄養」といいます。

低栄養は、体重だけでなく、毎日の小さな変化から気づけることがあります。

この記事で分かること

  • 低栄養が体に与える影響
  • 家族が見逃しやすい7つのサイン
  • そのまま使えるチェックシート
  • 不足しやすい栄養素と、今日からできる工夫

高齢者施設で働く管理栄養士の私が、施設で実際にしていることもあわせてお伝えします。

結論|低栄養は体重だけではわからない

低栄養は体重だけではわからない。体重計、ゆるくなったズボン、ふくらはぎ、残した食事

低栄養に気づくきっかけとして、体重はとても大切です。けれど、体重が大きく変わる前から、服のゆるみや疲れやすさなど、ほかのサインが出ていることもあります。毎日そばで見ている家族だからこそ、気づけることがあります。

食べていても低栄養になることがある

ごはんやパンなどでお腹はふくれていても、筋肉のもとになるたんぱく質が足りていないことがあります。体重が変わらなくても、筋肉が減って脂肪が増えている、ということも少なくありません。
→ 食べてるのに低栄養と言われたら|原因と体重での確かめ方

小さな変化に気づけるのは家族

低栄養は、ゆっくり進むことが多いものです。本人は「年のせい」と思っていることもあります。久しぶりに会ったときの「なんだか細くなった?」という感覚も、大切な手がかりです。

施設では月に1回体重を量る

とり子

施設では、入居者さんの体重を月に1回量っています。体重が減ってきた方やむくみがある方は、看護師の判断で週に1回に増やすこともあります。

定期的に量っておくと、「先月より減っている」という変化に早く気づけます。家でも、月に1回、同じ時間に量ることから始めてみてください。

低栄養が引き起こすこと

低栄養が引き起こすこと。筋力の低下、免疫力の低下、飲み込む力の低下、傷の治りが遅い、元気がない

低栄養が続くと、体のあちこちに影響が出てきます。ひとつの変化が次の変化につながり、少しずつ元気が失われていくことがあります。早めに気づくことが大切なのは、このためです。

筋力が落ちて転びやすくなる

筋肉が減ると、歩く力や立ち上がる力が弱くなります。転びやすくなり、骨折につながることもあります。

病気にかかりやすく、飲み込む力も落ちる

体の抵抗力が落ちて、かぜや肺炎などにかかりやすくなります。飲み込むための筋肉も弱くなり、むせやすくなることがあります。

傷が治りにくく、気力も落ちる

すり傷や床ずれが治りにくくなります。疲れやすく、気持ちが沈みがちになることもあります。

家族が見逃しやすい7つのサイン

家族が見逃しやすい7つのサイン。体重、服、ふくらはぎ、食事量、疲れ、肌や髪、傷

ここからは、家族が気づきやすい7つのサインを紹介します。どれも特別な道具がなくても確かめられるものです。全部を一度に確かめなくても大丈夫なので、気になるものから見てみてください。

① 体重が減った

いちばん分かりやすいサインです。1か月で5%以上減っていたら、注意したい目安です。体重50kgの方なら、1か月で2.5kg以上にあたります。
→ 最近、親が痩せてきた|放置してはいけない理由と体重の見方

② 服がゆるくなった

体重計がなくても、服の着心地で変化に気づけます。以前ちょうどよかったズボンのウエストがゆるい、服が大きく見える、といった変化は、体が細くなってきたサインかもしれません。

③ ふくらはぎが指で囲める

「指輪っかテスト」と呼ばれる、筋肉の量を確かめる方法です。両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎのいちばん太いところを囲んでみます。

  • 囲めない:筋肉の量は保たれていると考えられます
  • ちょうど囲める:少し注意して様子を見ましょう
  • すき間ができる:筋肉が減っている可能性があります
指輪っかテスト。ふくらはぎを両手の指の輪で囲めない、ちょうど囲める、すき間ができるの3つの状態

④ 食事の量が減った

いつも出している量の4分の3くらいしか食べられない日が続くときは、注意したいサインです。施設で使っている国の様式でも、食事の量が75%以下になると注意が必要とされています。量が減ったときは、「どうして食べられないのか」を考えることが第一歩です。
→ 高齢の親が食べない|少量でも食べやすい常備食

⑤ 疲れやすい・よく昼寝をする

「年だから」と見過ごされがちですが、栄養が足りずに疲れやすくなっていることもあります。以前より横になっている時間が長い、外に出たがらない、といった変化も手がかりになります。

⑥ 肌や髪に変化がある

肌や髪は、栄養の影響を受けやすいところです。肌が急にかさかさしてきた、髪が細くなった、抜けやすくなった、という変化は、栄養が足りていないサインのこともあります。

⑦ 傷が治りにくい

すり傷や床ずれがなかなか治らないときは、たんぱく質などが足りていないことが関係している場合があります。

そのまま使えるチェックシート

低栄養のサインのチェックシートに鉛筆で印をつける家族の手元

7つのサインを、チェックシートにまとめました。今日確かめられるものから、印をつけてみてください。次に相談するときに、そのまま見せることもできます。

サイン確かめ方当てはまる?
1か月で体重が5%以上減った体重計で量る□
服がゆるくなった着心地を見る□
ふくらはぎが指で囲める指輪っかテスト□
食事の量が4分の3くらいに減った食べる様子を見る□
疲れやすい・よく昼寝をするふだんの様子を見る□
肌や髪に変化がある肌や髪を見る□
傷が治りにくい傷の様子を見る□

当てはまるものがあって気になるときは、早めにかかりつけ医や管理栄養士に相談してみてください。いくつ当てはまったら、という決まりはありません。「いつもと違う」と感じたときが、相談のタイミングです。

特に不足しやすい3つの栄養素

特に不足しやすい3つの栄養素。たんぱく質、エネルギー、水分をとれる食品

高齢の方の食事で特に不足しやすいのは、たんぱく質・エネルギー・水分の3つです。どれも、食べる量が減ると真っ先に足りなくなりやすいものです。それぞれの目安と、取り入れやすい工夫を紹介します。

筋肉のもとになるたんぱく質

65歳以上の方の1日のたんぱく質の目安(推奨量)は、男性60g、女性50gです(日本人の食事摂取基準2025年版)。

食品たんぱく質の量(目安)
卵1個約6g
牛乳コップ1杯(200ml)約7g
豆腐1/3丁約5g
鶏むね肉100g約23g

毎食、魚・肉・卵・牛乳・大豆製品のどれかを1品入れることを目指してみましょう。
→ 缶詰でたんぱく質を補う|高齢の親と食べる簡単アレンジ

体を動かすもとになるエネルギー

エネルギーが足りないと、体は筋肉を分解してエネルギーにしてしまいます。食べる量が少ないときは、同じ量でエネルギーを増やせるものを加えるのがおすすめです。

  • ごはんやおかゆに、バターや油を少し加える
  • 料理に牛乳やチーズを使う
  • 食事の間に、栄養補助食品(ドリンクやゼリー)をとる

見落としやすい水分

高齢になると、のどの渇きを感じにくくなることがあります。食事のときやおやつの時間など、飲む時間を決めて、少しずつとってもらいましょう。心臓や腎臓の病気などで水分を制限されている方は、主治医の指示に従ってください。
→ 高齢の親が水を飲んでくれない|施設で実際にしている飲んでもらう工夫

今日からできる改善策

今日からできる改善策。体重測定、たんぱく質1品、栄養補助食品、食事の形の見直し、専門職への相談

低栄養を防ぐために、特別なことをする必要はありません。毎日の中で続けられる小さな工夫が大切です。できそうなものから、ひとつずつ取り入れてみてください。

月に1回、体重を量る

同じ時間、同じくらいの服装で量ると、変化が分かりやすくなります。量った日と体重を、カレンダーに書いておくと便利です。

毎食にたんぱく質を1品

朝ごはんに卵、昼に豆腐、夜に魚、というように、毎食ひとつずつ入れられると理想的です。できない日があっても大丈夫。1日のどこかで補えれば十分です。

食べにくさがあれば食事の形を見直す

噛みにくい、飲み込みにくいといった理由で食べる量が減っていることもあります。その場合は、自己判断で細かく刻むより、専門職に相談して、親に合った食事の形を見直してもらうのがおすすめです。細かく刻むと、口の中でばらけて、かえって食べにくくなることがあるためです。
→ 食形態を変えるタイミングがわからない|判断の5つのサイン

よくある質問

高齢者の低栄養についてよくある質問のバナー

体重が減っていなければ大丈夫ですか

体重が変わらなくても、筋肉が減っていることがあります。指輪っかテストや、服のゆるみ、疲れやすさなど、ほかのサインもあわせて見てみてください。

ぽっちゃりしているので心配ないですか

体型がふっくらしていても、たんぱく質が足りずに筋肉が減っていることがあります。見た目だけでなく、食べている内容や体重の変化も見てみましょう。

栄養補助食品はいつから使えばいいですか

食事の量が減ってきて、食事だけでは足りないと感じたときが使いどきです。選び方はこちらで紹介しています。
→ 栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか

本人が「食べたくない」と言います

無理にすすめると、かえって食事がつらくなることがあります。少ない量を回数に分ける、好きなものから出すなど、食べやすいきっかけをつくってみてください。

どこに相談すればいいですか

まずはかかりつけ医に相談してみましょう。お住まいの地域包括支援センターやケアマネジャーに聞くと、管理栄養士による訪問の栄養相談などを紹介してもらえることもあります。

体重と食べた量を記録できる「体重・食事量の記録表」を、無料でダウンロードできます。小さな変化に気づくために使ってみてください。

体重・食事量の記録表 無料ダウンロード

まとめ|小さな変化に早めに気づく

低栄養は、ゆっくり、気づかないうちに進むことがあります。毎日そばにいる家族の「いつもと違う」が、いちばんの手がかりです。

この記事の振り返り

  • 低栄養は、体重が変わる前からサインが出ていることがある
  • サインは、体重・服・ふくらはぎ・食事の量・疲れ・肌や髪・傷の7つ
  • 気になるサインがあれば、早めに相談する
  • たんぱく質の目安は、65歳以上で男性60g・女性50g
  • 月に1回の体重測定から始めてみる

まずは今月、親の体重を量って、カレンダーに書いてみてください。

※本記事の情報は一般的な内容です。持病や食事制限がある方は、かかりつけ医・管理栄養士などにご相談ください。

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」/厚生労働省「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング(施設)(様式例)」/東京都健康長寿医療センター研究所「地域で取り組む!フレイル予防スタートブック」(2021)

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。