相談者

毎日、肉や魚を買って調理するのが大変です。缶詰に頼ってしまうのは、手抜きでしょうか。

とり子

手抜きではありません。私が働く施設の献立にも、缶詰はふつうに登場します。計画的に使う食材のひとつですよ。

高齢になると食べる量が減り、たんぱく質が不足しやすくなります。けれど、毎日肉や魚を買って調理するのは、介護する側にとって大きな負担です。

そこで役立つのが缶詰です。缶詰を「完成品」ではなく「調理済みの材料」と考えると、使い道がぐっと広がります。

この記事で分かること

  • 缶詰を「材料」として使う考え方
  • 選ぶときの4つのポイント
  • そのまま使える4つの簡単アレンジ
  • 缶詰を使うときに気をつけること

高齢者施設で働く管理栄養士(JSDR認定士)の私が、現場での使い方をご家庭向けにお伝えします。

結論|缶詰は「調理済みの材料」

缶詰は「完成品」ではなく「調理済みの材料」であることを示した図

缶詰をそのまま出すと、味が濃かったり、食べにくかったりします。ひと手間だけ加えて「材料」として使うと、一気に扱いやすくなります。

開けるだけで主菜の土台になる

魚、鶏、豆の缶詰は、すでに加熱してあります。あとはほぐす・卵でとじる・野菜と煮るだけで主菜になります。生の肉や魚を扱うより、手間も衛生面の心配も減ります。

たんぱく質を切らさないための保険

買い物に行けない日が続くと、真っ先に減るのがたんぱく質です。常温で置ける缶詰があれば、「今日はおかずがない」をなくせます。

食事量が減ってきた方は、低栄養が心配になります。見逃しやすいサインは、こちらにまとめています。
→ 高齢者の低栄養とは?家族が見逃しやすい7つのサインと今日からできる改善策

施設の献立にも、缶詰は登場します

とり子

朝食に「温めるだけで出せるもの」として鯖の味噌煮の缶詰を使うことがありますし、昼食のデザートに缶詰の果物やゼリーが登場する日もあります

さらに、非常食として備蓄しているシーチキンは、期限が切れる前に通常の献立で使い切るローリングストックで回しています。備えておいて、普段の食事で消費して、また買い足す。この形なら無駄が出ません。

プロの現場でも、缶詰は「手抜き」ではなく、計画的に使う食材です。

選ぶときの4つのポイント

缶詰を選ぶときの4つのポイント。小さめサイズ、水煮の味付け、食べ慣れた中身、骨や皮の確認
見るところ選び方
サイズ一度で使い切れる小さめを選ぶ
味付け水煮・食塩不使用・減塩の表示を比べる
中身本人が好む味、食べ慣れた魚や肉
骨や皮骨・皮・大きな繊維を確認しやすいもの

小さめサイズを選ぶ

食事量が少ない方の場合、大きな缶を開けると余ります。一度で使い切れる量を選ぶほうが、結果的に無駄が出ません。

味付きより水煮が使いやすい

水煮なら、あとから味を調整できます。汁気も自分で加減できるので、ぱさつきを抑えたいときにも便利です。

食べ慣れたものを選ぶ

栄養面がよくても、本人が嫌いなものは食べてもらえません。まずは昔から食べていた魚や肉から選んでください。

骨や皮を確認する

魚缶には小さな骨が入っていることがあります。ほぐしながら取り除き、出す前にご自身が一口食べて確かめてください。

食べやすさを確かめる方法は、こちらで詳しく書いています。
→ 【管理栄養士が解説】高齢の親が食べやすい常備食の選び方

4つの簡単アレンジ

缶詰の簡単アレンジ4つ。ツナと卵のやわらか煮、さば缶の豆腐あん、鶏缶とかぼちゃの煮物、大豆とトマトのスープ

どれも、缶を開けてから10分ほどでできます。やわらかさはスプーンの縁で切れるかを目安にしてください。

ツナと卵のやわらか煮

ツナを細かくほぐし、溶き卵とだしで加熱します。卵がつなぎになるのでぱさつきにくく、口の中でまとまりやすい一品です。ごはんにも合わせやすく、迷ったときの定番になります。

さば缶の豆腐あん

骨を確認してほぐしたさばと、豆腐を一緒に温めます。豆腐の水分でまとまりやすくなります。

なお、普段からとろみ調整を指示されている方は、指定された方法に従ってください。この料理に合わせてとろみを変えるものではありません。

鶏缶とかぼちゃの煮物

冷凍かぼちゃと鶏缶を、少量のだしで煮ます。かぼちゃが煮くずれるくらいまで火を通すと、全体がまとまってやわらかくなります。

大豆とトマトのスープ

やわらかく水煮した大豆と、トマトの缶詰を煮込みます。豆の皮が口に残るようなら、木べらで軽くつぶしてください。

缶詰を使うときに気をつけること

缶詰を使うときに気をつけること。開けたら早めに使い切る、果物の缶詰は制限がなければ汁ごとで大丈夫

開けたら早めに使い切る

開封後は缶のまま保存せず、別の容器に移して冷蔵し、早めに使い切ってください。

果物の缶詰は、制限がなければ汁ごとで大丈夫

果物の缶詰のシロップには、カリウムが多く含まれます。ただし、気にする必要があるのは、腎臓の病気でカリウム制限を受けている方だけです。

とり子

私の施設でも、汁を切っているのはカリウム制限のある方だけです。ほかの方には、汁ごとお出ししています

制限を言われていなければ、シロップを気にして残す必要はありません。むしろ、汁があったほうが飲み込みやすいこともあります。

こんなときは相談してください

  • 食事中のむせが増えた
  • 食後に声がゴロゴロする
  • 口の中に食べ物が残っている

食材を変えるだけで解決しようとせず、主治医・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などにご相談ください。

よくある質問

缶詰の使い方についてよくある質問をまとめたバナー

缶詰ばかりで栄養は足りますか

缶詰だけで完結させる必要はありません。主菜を缶詰に任せて、野菜や汁物を足す形なら十分に組み立てられます。

「缶詰は嫌」と言われます

缶のまま出さず、ほぐして卵とじや煮物にすると受け入れられることがあります。それでも嫌がる場合は無理に続けず、別の食品に替えてください。

どのくらい買い置きすればいいですか

まずは3日分から。多くそろえるより、普段の食事で使って買い足すローリングストックのほうが、期限切れを防げます。

さば缶は骨まで食べられると聞きました

やわらかく加工されている商品が多いですが、かたい骨が残っていることもあります。高齢の方に出す場合は、必ずほぐして確認してください。

魚缶の汁は使ったほうがいいですか

ぱさつきを抑えたいときは、汁を少し使うとまとまりやすくなります。ただし、塩分制限がある方は主治医や管理栄養士の指示に従ってください。果物の缶詰のシロップは、カリウム制限がなければ汁ごとで問題ありません。

飲み込みに不安がある場合も使えますか

ほぐした魚は口の中でばらけやすく、飲み込みに不安のある方には注意が必要です。卵や豆腐でまとめるなどの工夫をしたうえで、専門職に相談してください。

まとめ|缶詰は材料として使う

缶詰をそのまま出すと「味が濃い」「食べにくい」で終わってしまいます。ひと手間だけ加えて材料として使えば、介護のごはんを支える立派な主菜になります。

この記事の振り返り

  • 缶詰は「完成品」ではなく「調理済みの材料」
  • 小さめサイズ・水煮・食べ慣れたものを選ぶ
  • 卵や豆腐でまとめると、ばらつきを抑えられる
  • 骨や皮は、出す前にほぐして確認する
  • 果物の缶詰は、カリウム制限がなければ汁ごとで大丈夫

まずはツナ缶と卵から。買い物に行けない日の主菜が、ひとつ決まります。

※本記事の情報は一般的な工夫です。食事制限、アレルギー、嚥下状態には個人差があります。むせや食べ残しが増えた場合は、自己判断で様子を見ず、主治医・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。