相談者

離れて暮らす母は、まだ元気です。でも一人暮らしなので、食事がおろそかになっていないか気になります。

とり子

先日、地域の集まりで栄養のお話をしてきました。そこで見た光景に、元気を保つヒントがありましたよ。

親が元気なうちは、食事のことはつい後回しになります。けれど一人暮らしになると、「作るのが面倒」「ひとりだとおいしくない」と、食事が少しずつ簡単になっていきがちです。

年をとって心と体が弱っていくことを「フレイル」といいます。フレイルを遠ざけるには、何を食べるかと同じくらい、誰と食べるかも大切です。

この記事で分かること

  • フレイルの3つの側面(体・心・人とのつながり)
  • ひとりで食べることが心と体に与える影響
  • 地域の集まりで見た「食を楽しむ」時間
  • 離れて暮らす家族ができること

高齢者施設で働く管理栄養士の私が、地域の集まりで感じたことと、今日からできる食べ方の工夫をお伝えします。

結論|食事は「誰と」も大事

食事は誰とも大事。フレイルの3つの側面、体・心・人とのつながり

フレイルというと、筋肉が落ちる、体重が減るといった体の変化を思い浮かべる方が多いと思います。けれど実際には、気持ちの落ちこみや、人とのつながりが減ることも含まれます。そして、この3つはお互いに影響し合っています。

フレイルには3つの側面がある

  1. 体のフレイル:筋肉が落ちる、体重が減る、噛む力や飲み込む力が弱くなる
  2. 心のフレイル:気力がわかない、気分が落ちこむ、もの忘れが増える
  3. 人とのつながりのフレイル:外出や人と話す機会が減り、家にこもりがちになる

つながりが減ると体も弱りやすい

人と会う機会が減ると、出かけなくなり、体を動かす量も減ります。お腹がすかないので、食べる量も減っていきます。こうして、つながりの減少から体の衰えへと、ドミノ倒しのように進んでいくことがあるといわれています。

静岡県の高齢者を対象にした調査では、地域のボランティア活動などの社会参加が、運動習慣と同じくらい死亡率の低さに関係していたと報告されています。

ひとりで食べることと心の元気

都内の高齢者を対象にした研究では、いつもひとりで食事をすること(孤食)が、フレイルや心の不調と関係していたと報告されています。家族と同居していても、食事がひとりなら同じ傾向が見られました。

一緒に住んでいるかどうかより、誰かと食卓を囲む時間があるかが大切だということです。

地域の集まりで見た食を楽しむ時間

地域の集まりで手作りのシフォンケーキや柿を囲み、お茶を楽しむ高齢の方たち

先日、地域の集まりで「いつまでも、食を楽しむ」というテーマでお話をしてきました。参加されたのは20名ほど。地域包括支援センターの方も来てくださいました。お話のあとに待っていたのは、みなさんの手作りのお茶菓子でした。

勉強会のあとは手作りのお茶菓子

テーブルに並んだのは、ふわふわのシフォンケーキ、手作りのブルーベリージャム、とれたての柿、キウイ入りのゼリー、きゅうりの漬物。どれも参加者の方の手作りです。

地域の集まりで出された手作りのシフォンケーキ、柿、きゅうりの漬物、キウイ入りゼリーとコーヒーの水彩イラスト
とり子

シフォンケーキは、この日のために4台も焼いてくださったそうです。ふわふわで、とてもおいしかったです。

作る人がいて、それを楽しみに集まる人がいる。お茶を飲みながら話がはずむ。体・心・つながりの3つが、ひとつのテーブルの上でそろっていると感じました。

みなさんの意識の高さに驚いた

お話の中で「年を重ねたら、食事は少なめでよい?」という○×クイズを出しました。答えは×です。参加者のみなさんは、全員が×を出していました。

食べ方の合言葉「さあにぎやかにいただく」や、ふくらはぎの筋肉を確かめる「指輪っかテスト」も、知っている方が多くいました。こうした集まりに参加していること自体が、学ぶきっかけになっているのだと思います。

お茶の時間に出てきた気がかり

お茶の時間には、ふだんの生活でちょっと気になっていることを聞かせてもらいました。「便秘が気になる」「バナナを1日2本食べているけど大丈夫?」「コーヒーを1日3〜4杯飲んでいるけど平気?」。どれも、ひとりで考えていると答えが出にくいことです。この3つは、記事の最後の「よくある質問」で紹介します。

体・心・つながりを守る食べ方

納豆・ヨーグルト・焼き魚・豆腐・卵など、たんぱく質の食品が並ぶ食卓を家族で囲む

集まりでお話しした内容から、家でもすぐできることを4つにしぼって紹介します。全部を一度にやる必要はありません。できそうなものを、ひとつ選んでみてください。

体|毎食たんぱく質を1品

魚・肉・卵・牛乳・大豆製品を、毎食ひとつ入れます。朝ごはんに卵を1個、夕ごはんにヨーグルトを1つ足すだけでも違います。

いろいろな食品を食べる目安には、「さあにぎやかにいただく」という合言葉が便利です。魚・油・肉・牛乳・野菜・海藻・いも・卵・大豆・果物の頭文字で、1日7つ以上を目指すとされています。
→ いろいろ食べポ(東京都健康長寿医療センター研究所)

心|食べきれない日は無理しない

食欲がない日は、1回の量を少なくして、食べられるときに少しずつ食べれば大丈夫です。ごはんに卵、温野菜にマヨネーズのように、少ない量でエネルギーを足せるものを加えるのもひとつの方法です。

全部を手作りしなくてもかまいません。缶詰や冷凍野菜、お惣菜も上手に使ってください。
→ 缶詰でたんぱく質を補う|高齢の親と食べる簡単アレンジ

つながり|誰かと食べる日をつくる

毎食でなくてもかまいません。週に1回、地域の集まりや友人とのお茶、家族との食事など、誰かと食卓を囲む日があるだけでも違います。

お口|噛む・飲み込む力を守る

食べることを楽しみ続けるには、噛む力と飲み込む力も大切です。お茶や汁物でむせる、食べこぼしが増えた、硬いものを避けるようになった。そんな変化は、早めに気づきたいサインです。
→ 親が食事中にむせる|家族が見る5つの観察ポイント

離れて暮らす家族ができること

離れて暮らす親に電話する家族と、帰省して一緒に食卓を囲む場面

親の食事を毎日見守るのは、離れて暮らしていると難しいものです。それでも、家族だからこそできることがあります。親がまだ元気なうちに、できることから始めてみてください。

地域の集まりを一緒に探す

地域には、体操教室やサロン、勉強会など、高齢の方が集まる場があります。どこで何をしているかは、地域包括支援センターに聞くと教えてもらえます。親の住んでいる地域のセンターに、家族が問い合わせることもできます。

電話や帰省で食事の話をする

「昨日は何を食べた?」と聞くだけでも、食事の様子が分かります。帰省したときは、冷蔵庫の中や体重の変化もさりげなく見ておきましょう。
→ 最近、親が痩せてきた|放置してはいけない理由と体重の見方

一緒に食べる日をつくる

帰省したときは、ぜひ一緒に食卓を囲んでください。親の好きな料理を一緒に作るのもおすすめです。食べる様子を近くで見ることで、噛む力や飲み込む力の変化にも気づきやすくなります。

よくある質問

フレイル予防と食事についてよくある質問のバナー

便秘が気になります

便は、ところてんと同じです。食べたものが入ってくることで押し出されて出てくるので、しっかり食べていないと出ません。まずは食事の量が足りているかを見直しましょう。あわせて、ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌などの乳酸菌も大切です。水分や、野菜・海藻・いもなどの食物繊維もとるようにしてください。便秘が長く続く、急に便の様子が変わった、お腹が痛いといったときは、かかりつけ医に相談してください。

バナナを1日2本食べても大丈夫ですか

好きなものは、食べ続けてほしいと思います。体重が安定していて、血液検査でも問題がなければ、続けてかまいません。ただ、バナナだけでなく、ほかの果物もぜひとってください。季節の果物を少しずつ取り入れると、楽しみも広がります。食事の制限がある方は、主治医の指示に従ってください。

コーヒーを1日3〜4杯飲んでも平気ですか

好きなものを、あえてやめる必要はありません。胃が痛むなど体に変化がなければ、楽しみとして続けてよいと思います。

参考までに、コーヒー1杯(150ml)のカフェインはおよそ90mgです。日本では摂取量の基準は決められていませんが、海外では健康な大人で1日400mgまでを目安にしている国があります。3〜4杯なら、その範囲内です。

親が集まりに行きたがりません

無理に誘う必要はありません。最初は家族が一緒に行く、友人に誘ってもらう、体操や料理など本人が興味を持てるものを選ぶなど、きっかけを工夫してみてください。

年をとったら食事は少なめでいいのでは

65歳を過ぎたら、減らすより「食べて元気を保つ」ことが大切です。持病で食事の指示がある方は、その指示を優先してください。
→ 食べてるのに低栄養と言われたら|原因と体重での確かめ方

まとめ|誰かと食べる時間を

手作りのお菓子を囲んで笑い合う時間は、体にも心にも栄養になります。食べることは、人とつながることでもあります。

この記事の振り返り

  • フレイルには、体・心・人とのつながりの3つの側面がある
  • いつもひとりで食べることは、フレイルや心の不調と関係している
  • 毎食たんぱく質を1品、いろいろな食品を食べる
  • 週に1回でも、誰かと食卓を囲む日をつくる
  • 地域の集まりは、地域包括支援センターに聞くと分かる

次の電話では、「最近、誰かとごはん食べた?」と聞いてみてください。

※本記事の情報は一般的な内容です。持病や食事制限がある方は、かかりつけ医・歯科医師・管理栄養士などにご相談ください。

参考:健康長寿ネット「フレイルとは」「フレイルと社会参加」/長寿科学振興財団「社会的フレイル:概念とアプローチ」(長寿科学研究業績集、2021年)/東京都健康長寿医療センター研究所「いろいろ食べポ」/食品安全委員会「食品中のカフェイン」ファクトシート

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。