認知症の型で食事の困りごとは違う|アルツハイマー型・レビー小体型・血管性
認知症の父が、最近ごはんを食べ始められなかったり、途中で手が止まったりします。どう対応すればいいのでしょうか。
認知症は、型によって食事で困ることが違います。まずはお父さんの型を知ることが、対応の手がかりになりますよ。
「さっきまで食べていたのに、急に手が止まる」「食べ物をじっと見たまま動かない」「むせることが増えた」。認知症の親の食事で、こうした変化に戸惑っている方は多いと思います。
認知症とひとくくりにされがちですが、型によって、食事で起こりやすいことは違います。
この記事で分かること
- 認知症の主な3つの型と、食事への影響
- 型ごとに気をつけたいこと
- 施設でしている食事の工夫
- 「治す」より「支える」という考え方
高齢者施設で働く管理栄養士の私が、現場で感じていることもあわせてお伝えします。
結論|型によって食事の困りごとは違う

認知症の親の食事で困ったときは、「どの型の認知症か」を知ることから始めましょう。型によって、食べられなくなる理由が違うからです。理由が分かれば、工夫のしかたも見えてきます。
認知症の主な3つの型
- アルツハイマー型認知症:もの忘れから始まることが多い
- レビー小体型認知症:見えないものが見える(幻視)、体が動きにくくなるなどの症状がある
- 血管性認知症:脳梗塞や脳出血のあとに起こる
このほかに、前頭側頭型認知症などの型もあります。
厚生労働省の研究班の調査では、認知症と診断された方のうち、アルツハイマー型が67.6%で最も多く、次いで血管性が19.5%、レビー小体型など(認知症を伴うパーキンソン病を含む)が4.3%でした。少し前の調査ですが、アルツハイマー型が全体の3分の2ほどを占めていることが分かります。
出典:厚生労働科学研究「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成23〜24年度、研究代表者 朝田隆)

まずは主治医に型を確かめる
親がどの型の認知症かは、診断をした主治医に聞くと分かります。「認知症です」とだけ聞いている場合は、次の受診のときに「どの型ですか」と聞いてみてください。いくつかの型が重なっていることもあります。
「治す」より「支える」
認知症の食事の問題は、治療で元どおりにできるとは限りません。だからこそ、今の力でどうしたら食べられるかを考えて、支えることが大切です。「キュア(治す)からケア(支える)へ」という考え方です。
アルツハイマー型認知症と食事

アルツハイマー型認知症では、飲み込む力そのものより、「食べ物を見て、口に運ぶ」までの段階でつまずくことが多いとされています。食べ物だと分からない、どう食べればいいか分からない、といった形で表れます。
食べ始められない・手が止まる
目の前の料理を食べ物だと分からなかったり、箸やスプーンの使い方が分からなくなったりすることがあります。食べたことを忘れて、「まだ食べていない」と言うこともあります。
比較的長く食べる力が保たれる
現場で見ていると、アルツハイマー型の方は、比較的最後まで口から食べられる印象があります。
飲み込む力が保たれているうちは、食べ始めるきっかけをつくることで、食べられることがあります。
一品ずつ出す
たくさんの器が並ぶと、何から食べればいいか分からなくなることがあります。施設では、気が散って食べ始められない方には、一品ずつ出す工夫をしています。家でも、器を一つずつ出してみてください。
レビー小体型認知症と食事

レビー小体型認知症は、飲み込みへの影響が早くから出やすい型です。体の動きにくさや、見えないものが見える症状もあり、食事の場面にもさまざまな形で表れます。
早い時期から飲み込みが弱くなる
レビー小体型認知症では、早い時期から飲み込む反射が弱くなり、せきも弱くなることがあるとされています。むせる様子がないまま、気管に入ってしまうこともあるので注意が必要です。
→ 親が食事中にむせる|家族が見る5つの観察ポイント
見えないものが見える
実際にはないものが、はっきり見える症状(幻視)があります。食事の場面では、料理の中に虫が入っていると言って、食べるのをやめてしまうこともあるといわれています。
施設でも、入居者さんの様子を見て「これは幻視が出ているね」とスタッフ同士で話すことがあります。本人には本当に見えているので、否定せずに受け止めることが大切です。
日によって調子が変わる
一日の中や日によって、しっかりしているときと、ぼんやりしているときの差が大きいのも特徴です。調子がよいときに食べてもらい、ぼんやりしているときは無理をしないようにしましょう。
血管性認知症と食事

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気のあとに起こります。障害を受けた脳の場所によって、症状は人それぞれです。早い時期から、まひなどの体の症状を伴うことがあります。
まひや飲み込みの障害を伴うことがある
手や口のまひがあると、食べ物を口に運ぶ、噛む、飲み込むといった動きが難しくなることがあります。食事の形は、専門職と相談して決めましょう。
→ 嚥下調整食の学会分類2021とは?
むせないまま気管に入ることも
脳の小さな梗塞があると、飲み込む反射が弱くなり、むせないまま食べ物や唾液が気管に入ること(不顕性誤嚥)が増えるとされています。むせがないから安心、とは限りません。
意欲が出ないこともある
血管性認知症は、もの忘れより先に、やる気が出ない、自分から動かないといった形で始まることもあります。食事への関心が薄れているときは、声かけや、好きな料理で食べるきっかけをつくってみてください。
どの型でも大切な食事の支え方

型によって違いはありますが、共通して大切なこともあります。認知症の食事は、できないことを数えるより、今できることを生かす工夫が大切です。家でもできることを3つ紹介します。
食べる環境を整える
テレビを消す、テーブルの上を片づけるなど、食事に集中できる環境をつくりましょう。器は、料理が見分けやすい色のものを選ぶと、食べ物だと分かりやすくなります。
無理に食べさせない
食べない日があっても、責めたり急かしたりしないでください。時間をおいてもう一度出す、好きなものから出すなど、食べるきっかけを変えてみましょう。
体重で食べる量を確かめる
食べる量が減っていないかは、体重で確かめられます。月に1回量り、1か月で5%以上減っているときは、かかりつけ医や管理栄養士に相談しましょう。
→ 最近、親が痩せてきた|放置してはいけない理由と体重の見方
よくある質問
型が分からないときはどうすればいいですか
主治医に聞いてみてください。型が分からなくても、この記事の「どの型でも大切な食事の支え方」は役に立ちます。
「虫が入っている」と言って食べません
否定せずに「取っておきますね」と受け止め、器を替えて出し直してみてください。続くときは主治医に相談しましょう。
食べたのに「食べていない」と言います
否定すると不安が強くなることがあります。「今、用意していますね」と伝え、小さなおやつや飲み物で気持ちを落ち着けてもらう方法もあります。
むせないので飲み込みは大丈夫ですか
レビー小体型や血管性の認知症では、むせないまま気管に入ることがあります。食後に声がガラガラする、熱が出るといった様子があれば、専門職に相談してください。
食べる量が減ってきました
少ない量でエネルギーやたんぱく質をとれる栄養補助食品も使えます。
→ 栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか
まとめ|型を知って今できることを
認知症の食事の困りごとは、型によって違います。型を知ることで、「なぜ食べられないのか」が見えてきます。
この記事の振り返り
- アルツハイマー型は、食べ物を見て口に運ぶまででつまずきやすい
- レビー小体型は、早くから飲み込みが弱くなり、幻視が出ることがある
- 血管性は、まひやむせない誤嚥に注意
- 一品ずつ出す、環境を整える、無理に食べさせない
- 「治す」より、今の力で食べられるよう「支える」
次の受診では、主治医に「どの型の認知症ですか」と聞いてみてください。
※本記事の情報は一般的な内容です。認知症の症状や進み方には個人差があります。食事や飲み込みについては、かかりつけ医・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。
参考:健康長寿ネット「レビー小体型認知症」「認知症の種類」/長寿科学振興財団「高齢者の摂食・嚥下障害とその対策」(長寿科学研究業績集)/国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」/厚生労働科学研究「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」

