やわらかく飲み込みやすい高齢者の食事|献立の考え方と施設の1日の例
母が噛みにくそうにしているので、やわらかい食事を作りたいです。でも毎日の献立を考えるのが大変で…。
特別な料理を作らなくても大丈夫です。いつもの献立を、やわらかく、まとまりやすくするコツを知っておけば、ぐっと楽になりますよ。
親が噛みにくそう、飲み込みにくそうにしていると、「何を作ればいいのだろう」と悩みますよね。介護食のレシピを調べても、手間のかかるものばかりで、毎日続けるのは大変です。
やわらかく飲み込みやすい食事は、いつもの献立に、3つのポイントを足すことから始められます。
この記事で分かること
- やわらかく飲み込みやすくする3つのポイント
- 主食・主菜・副菜・汁物ごとの工夫
- 施設の1日の献立の例
- 毎日続けるための手の抜き方
高齢者施設で献立の確認をしている管理栄養士の私が、施設での工夫もあわせてお伝えします。
結論|やわらかさ・まとまり・水分の3つ

食べやすい食事に大切なのは、やわらかいこと、口の中でまとまりやすいこと、そしてぱさつかないことの3つです。この3つを意識するだけで、いつものおかずも食べやすくなります。ここでは、献立を考えるときの土台になる考え方を紹介します。
食事で大切にしたいこと
安全に。楽に。笑顔になる。食事。
食べる人が安全に食べられること。作る人が無理なく続けられること。そして、食卓に笑顔があること。やわらかい食事を考えるときも、この3つを大切にしています。
食べやすくする3つのポイント
- やわらかさ:じっくり煮る、蒸す。繊維を断つように切る
- まとまり:あんかけやとろみで、口の中でばらけないようにする
- 水分:煮汁やソースを使って、ぱさつかないようにする
食事の段階が決まっていればそれが先
病院や施設で食事の段階(コード)が決まっている方は、まずその段階に合わせてください。この記事の工夫は、家でのやわらかい食事づくりの参考にしてください。
→ 嚥下調整食の学会分類2021とは?コードの見方を家族向けに解説
主食・主菜・副菜・汁物の工夫

献立は、主食・主菜・副菜・汁物に分けて考えると組み立てやすくなります。それぞれに、やわらかく食べやすくするコツがあります。全部を一度に変えなくても大丈夫です。
主食(ごはん・パン)
ごはんは、水を多めにしてやわらかく炊くか、おかゆにします。パンは、ぱさついて口の中の水分をとられやすい食べ物です。牛乳やスープに浸したり、パンがゆにしたりすると食べやすくなります。
主菜(肉・魚・卵)
肉はひき肉や薄切りを使い、煮込んだりあんをかけたりします。魚は焼くより煮る方が、しっとりして食べやすくなります。大根おろしで煮る「おろし煮」もおすすめです。卵は、オムレツや茶碗蒸しにすると、やわらかく仕上がります。
副菜・汁物
野菜は、皮をむき、やわらかくなるまで煮ます。生野菜のサラダは噛みにくいので、ゆでたり煮たりしたものにします。汁物は、飲み込みに不安がある方には、とろみをつけるか、具と汁を分けて出しましょう。
→ 高齢の親が食べにくい料理とは?6つの特徴と家でできる工夫
施設の献立とやわらかくする工夫

施設では、同じ献立をもとに、入居者さん一人ひとりに合わせてやわらかさを変え、できる限りやわらかく出しています。家庭でも、家族と同じ献立をもとに、親の分だけやわらかくすると、別メニューを作る手間が省けます。
施設のある日の献立
| 食事 | 献立 |
|---|---|
| 朝 | ロールパン・いちごマーガリン・オムレツ・キャベツサラダ・コンソメスープ・ヨーグルト |
| 昼 | ごはん・魚のおろし煮・なすのみそ炒め煮・すまし汁・パイン缶 |
| 夕 | ごはん・鶏肉のケチャップ焼き・卵サラダ・みそ汁 |
食事の形ごとの変え方
施設では、常食の一口大、きざみ、極きざみ(コード3)、ミキサー食(コード2-2)など、入居者さんの食事の形に合わせて、同じ料理を作り分けています。
| 料理 | 施設での作り分け |
|---|---|
| ロールパン | 常食一口大・きざみの方にはパン。極きざみ・ミキサー食の方には、パンがゆか、パンがゆのソフト食 |
| キャベツサラダ | キャベツをやわらかくゆでてサラダに。きざみは包丁で細く、極きざみはフードプロセッサー、ミキサー食はミキサーで形を整える |
| 魚のおろし煮 | 骨のない魚を使う。ミキサーにかけるときは、皮を取ることが多い |
| なすのみそ炒め煮 | 冷凍の揚げなすを使う。やわらかく炒め煮にする |
| 鶏肉のケチャップ焼き | 食事の形に合わせて、包丁・フードプロセッサー・ミキサーを使い分ける |
おやつのパンは、ミキサー食の方には牛乳と一緒にミキサーにかけています。極きざみやきざみの方の中には、フロアで牛乳に浸して食べる方もいます。一人ひとりに合わせた対応です。
なすの皮はかたく、口から出してしまう方もいます。注意したい食材のひとつです。以前働いていた施設では生のなすを使っていたので、皮はすべてむいていました。

家で作るときも、考え方は同じです。骨のない切り身を選ぶ、なすは皮をむく、食事の形に合わせて包丁・フードプロセッサー・ミキサーを使い分ける。この3つを覚えておくと、家族と同じ献立から親の分を作りやすくなります。
「これなら食べられる」を大切に
施設には、パンがゆのソフト食と濃厚流動食しか食べない方もいます。パンがゆをミキサーにかけて、酵素入りのゲル化剤を加え、スチームで加熱して固めたものです。
食べられるものが少なくても、「これなら食べられる」ものがあることが大切です。無理に品数を増やすより、食べられるものを大切にしながら、足りない栄養は栄養補助食品などで補う方法もあります。
→ 栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか
毎日続けるための工夫

やわらかい食事づくりは、毎日のことです。がんばりすぎると続きません。作る人が楽になる工夫も取り入れてください。
家族と同じ献立から取り分ける
親のために別の料理を作るのではなく、家族の料理を途中で取り分けて、親の分だけ長く煮たり、あんをかけたりします。
市販の介護食を上手に使う
主食は手作り、おかずは1品だけ市販品にする、といった組み合わせもおすすめです。
→ ユニバーサルデザインフードとは?4つの区分と市販の介護食の選び方
ミキサーを使うときは煮汁で
ミキサーにかけるときは、水ではなく煮汁やだしで伸ばすと、味も栄養も落ちにくくなります。
→ ミキサー食がまずくなる本当の理由|水ではなく煮汁を使う
よくある質問

細かく刻めば食べやすくなりますか
細かく刻むと、口の中でばらけて、かえって食べにくくなることがあります。刻むときは、あんをかけてまとめてください。
やわらかくすると味が薄くなります
煮汁やだしをしっかり使うと、味がぼやけにくくなります。ごまやかつお節など、香りのあるものを添えるのもおすすめです。
同じものしか食べません
施設にも、決まったものしか食べない方がいます。食べられるものがあることを大切にして、栄養が足りないときは専門職に相談しましょう。
生野菜は食べさせない方がいいですか
噛む力や飲み込む力によります。噛みにくそうなときは、ゆでたり煮たりしたものに変えてみてください。
どのくらいやわらかくすればいいですか
親の噛む力や飲み込む力によって違います。迷ったときは、主治医や管理栄養士、言語聴覚士に相談してください。
まとめ|安全に楽に笑顔になる食事を

やわらかく飲み込みやすい食事は、特別な料理でなくても作れます。やわらかさ・まとまり・水分の3つを意識して、いつもの献立を少しずつ変えてみてください。
この記事の振り返り
- ポイントは、やわらかさ・まとまり・水分の3つ
- 主食・主菜・副菜・汁物ごとに工夫する
- 家族と同じ献立から、親の分だけやわらかくする
- 「これなら食べられる」ものを大切にする
- 市販の介護食も上手に組み合わせる
今夜の夕食から、親の分だけ、あんかけやとろみを1品足してみてください。
※本記事の情報は一般的な工夫です。噛む力や飲み込む力には個人差があります。食事の形については、かかりつけ医・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

