高齢の親が食べにくい料理とは?6つの特徴と家でできる工夫
最近、母がパンや焼き魚を食べにくそうにしています。どんな料理に気をつければいいのでしょうか。
食べにくい食べ物には、共通する特徴が6つあります。特徴が分かれば、いつものおかずのままで工夫できますよ。
年齢とともに、噛む力や飲み込む力は少しずつ弱くなります。昔から好きだった料理なのに、最近は箸が進まない。食事に時間がかかるようになった。そんな変化に気づいて、何を作ればいいのか迷っている方も多いと思います。
食べにくさは、料理の名前ではなく食べ物の「特徴」で見分けると分かりやすくなります。
この記事で分かること
- 食べにくい食べ物の6つの特徴
- 特徴ごとの、家でできる工夫
- 「飲み込みやすい」と言われる食べ物の落とし穴
- 施設でのパン・こんにゃく・かき氷の出し方
高齢者施設で、入居者の方の食事の形や食べる様子を確認している管理栄養士の私が、現場で実際にしている工夫もあわせてお伝えします。
結論|食べにくさは6つの特徴で見分ける

「この料理は大丈夫?」と一品ずつ悩むより、食べにくくなる特徴を先に知っておく方が、献立は楽になります。特徴は6つです。同じ食材でも、切り方や調理のしかたで食べやすさは変わります。
料理の名前ではなく特徴で見る
焼き魚が食べにくいのは、魚だからではなくぱさついているからです。煮魚にしたり、あんをかけたりすると食べやすくなることがあります。
食べにくくなる6つの特徴
- かたいもの
- ぱさつくもの
- バラバラになるもの
- さらさらした液体
- 口の中にはりつくもの
- べたつくもの
決まった食事の段階があれば、それが先
病院や施設で食事の段階(コード)が決まっている方は、まずその段階に合わせます。この記事の工夫は、今の段階の中で、もっと食べやすくするためのものです。段階の見方は嚥下調整食の学会分類2021とは?で説明しています。
食べにくい6つの特徴と家でできる工夫

ここからは、6つの特徴ごとに、よくある食べ物と家でできる工夫を紹介します。全部を一度に変える必要はありません。「最近食べにくそうだな」と感じる料理から、ひとつずつ見直してみてください。
① かたいもの
ごぼうやれんこん、いか、たこ、ナッツ、こんにゃくなどです。噛み切れないまま飲み込むと、のどに詰まりやすくなります。
根菜は、繊維を断つように切って、やわらかくなるまで煮ます。圧力鍋を使うと時間も短くなります。
施設では、こんにゃくは使わずに、しらたきにしています。副菜は材料をだいたい60〜70g使いますが、そのうちしらたきは10gを超えないようにしています。
しらたきは細いので、こんにゃくより噛み切りやすくなります。それでも弾力はあるので、量を少なめにして、スプーンにのる長さまで短く切っています。
② ぱさつくもの
パン、焼き魚、ゆで卵の黄身、ふかしたいも、カステラなどです。口の中の水分をとられて、まとまりにくくなります。
魚は焼くより煮る、あんをかける。卵はゆで卵より、スクランブルエッグや茶碗蒸しにする。いもは、牛乳やバターを加えてなめらかにすると食べやすくなります。
施設では、週に1回パンを出しています。ロールパンはのどに詰まりやすいので、丸呑みしてしまう方や、以前パンを詰まらせたことがある方には、そのままではなく、フロアで一口大にしてから出しています。
家でも、丸呑みが心配な方には、パンをちぎって一口大にしてから出すと安心です。一口大にしても、よく噛んでから飲み込むことが前提になります。牛乳やスープに浸すと、ぱさつきもおさえられます。
③ バラバラになるもの
ひき肉のそぼろ、ブロッコリー、チャーハン、細かくきざんだ野菜などです。口の中で散らばってまとめにくく、残ったかけらがのどに入りやすくなります。
あんかけにして、とろみでまとめるのが一番かんたんです。ひき肉は、卵や豆腐をつなぎにして肉団子にすると、まとまりやすくなります。
④ さらさらした液体
水、お茶、みそ汁、ジュースなどです。のどを流れる速さに、飲み込むタイミングが合わないとむせやすくなります。
水分でむせる方には、とろみをつけると流れがゆるやかになります。ただし、つけすぎるとかえってのどに残りやすくなります。濃さの目安はとろみの濃度、なんとなくで決めていませんかをご覧ください。
もうひとつ気をつけたいのが、さらさらした汁と、かたまりの具が一緒に口に入るものです。具のあるみそ汁やスープ、雑煮などがそうです。汁と具で飲み込むタイミングがずれて、むせる原因になります。飲み込みに不安がある方は、汁にとろみをつけるか、具と汁を分けて出してください。
⑤ 口の中にはりつくもの
焼きのり、わかめ、レタスなどの葉もの、もなかの皮、ウエハースなどです。薄くて軽いものは、上あごやのどにはりついて取れにくくなります。
のりは佃煮にしたり、ごはんと混ぜたりして使います。葉ものは、やわらかくゆでてから細かく切り、おひたしや和え物にするとはりつきにくくなります。
⑥ べたつくもの
餅、団子、粘りの強いものなどです。口の中でまとまりすぎて、のどを通りにくくなります。
餅は、冷めるとかたくなるため、食べ終わる頃には出したときより食べにくくなっています。お正月の餅の出し方は高齢者に餅を出していい?お正月に安全に楽しむ方法で詳しく紹介しています。
飲み込みやすい食べ物にも落とし穴がある

プリン、ゼリー、ポタージュ、茶碗蒸し、とろろ、アイスクリーム。これらは一般に「飲み込みやすい食べ物」として紹介されます。なめらかで、口の中でまとまりやすいからです。ただ、食べるときの状態によっては、かえって食べにくくなるものもあります。
口の中で溶けて、さらさらに変わる
アイスクリームやシャーベット、かき氷は、口の中の温度で溶けて、さらさらの液体に変わります。水やお茶にとろみが必要な方には、むせやすい食べ物です。
ゼリーも、時間がたつと水分がしみ出してくることがあります。器にたまった水分は、さらさらした液体と同じです。
施設の納涼祭とかき氷の工夫
施設の納涼祭で、市販のカップのかき氷を出したことがあります。とろみが必要な方には、一度溶かしてから、とろみをつけて出しました。
その後、施設でかき氷を作るときは、栄養に特化したヘルスケア企業のニュートリーが紹介しているレシピを参考にしています。水にとろみ剤と砂糖を溶かしてから凍らせる作り方です。施設では、凍らせたとろみ水をかき氷機にセットして、削って出しました。はじめからとろみのついた水を凍らせるので、溶けてもさらさらになりにくいのが特徴です。
作り方と分量は、ニュートリーのサイトで確認できます。レシピでは、かき氷機の代わりにミキサーで細かくする方法が紹介されています。
→ かき氷のレシピ(ニュートリー株式会社)
温度と時間で食べやすさは変わる
食べやすさは、作ったときではなく口に入るときの状態で決まります。やわらかく作ったおかずも、冷めてかたくなれば食べにくくなります。
食べるのに時間がかかる方には、一度に全部を出さず、温かいうちに少しずつ出すのもひとつの方法です。
家のおかずを食べやすくするコツ

6つの特徴を、主食・主菜・副菜と汁物に分けて、献立で使いやすい形にまとめました。特別な介護食を作らなくても、いつもの料理を少し変えるだけで食べやすくなるものがあります。
主食(ごはん・パン・麺)
- ごはんは水を多めにして、やわらかめに炊く
- パンは一口大にちぎって出す。牛乳やスープに浸す
- 麺は短く切って、やわらかくゆでる
主菜(肉・魚・卵)
- 肉は薄切りやひき肉を選び、筋を切る
- 魚は脂ののったものを選び、焼くより煮る
- 加熱しすぎない。かたくなる前に火を止める
- 卵はスクランブルエッグや茶碗蒸しにする
副菜・汁物・果物
- 野菜は皮をむき、繊維を断つように切ってやわらかく煮る
- ばらけるものは、あんかけでまとめる
- 汁物は、必要な方にはとろみをつける
- 果物は、やわらかい缶詰も使える
毎食すべてを手作りしなくても大丈夫です。市販の介護食や宅配食も上手に組み合わせてください。
よくある質問

パンは出さない方がいいですか
よく噛んで食べられる方なら、一口大にちぎって出せば楽しめます。丸呑みしてしまう方や、食事の段階が決まっている方は、出してよいか専門職に相談してください。
こんにゃくは食べられませんか
噛む力や飲み込む力によります。施設では、こんにゃくの代わりにしらたきを少量使っています。迷ったときは、しらたきから試してみてください。
アイスはやわらかいから大丈夫ですか
口の中で溶けるとさらさらの液体になります。水やお茶にとろみが必要な方は、溶かしてからとろみをつけるなどの工夫が必要です。
細かくきざめば食べやすくなりますか
細かくするほど、口の中でバラバラになりやすくなります。きざむときは、あんをかけてまとめてください。きざんだ食事で合っているかは、専門職に確認すると安心です。
→ 食形態を変えるタイミングがわからない|判断の5つのサイン
食べにくそうかどうか、どこを見ればいいですか
むせる、食事に時間がかかる、口の中に残る、といった様子が目安になります。
→ 親が食事中にむせる|家族が見る5つの観察ポイント
外食のときはどうすればいいですか
6つの特徴を知っておくと、メニュー選びにも役立ちます。
→ 飲み込みに不安があっても外食はできる|店選びと確認すること
行事の日には、市販のプリンにひと手間加えたおやつもおすすめです。
→ ハロウィンのおやつは市販のかぼちゃプリンで|飲み込みに不安がある親とも楽しむ飾りつけ
いつもの献立をやわらかくする考え方は、こちらで紹介しています。
→ やわらかく飲み込みやすい高齢者の食事|献立の考え方と施設の1日の例
食べにくくなる理由を、体の変化から知りたい方はこちらもどうぞ。
→ 高齢者のからだの変化と食事|口・のど・胃腸・五感で起きること
まとめ|特徴を知れば工夫できる
食べにくい料理を避けるだけでは、食卓はさみしくなります。なぜ食べにくいのかが分かれば、好きな料理を工夫して出し続けられます。
この記事の振り返り
- 食べにくさは、かたい・ぱさつく・バラバラ・さらさら・はりつく・べたつくの6つで見分ける
- 丸呑みが心配な方のパンは一口大に。こんにゃくはしらたきを少量・短く
- 汁と具が一緒に口に入るものに注意
- アイスやかき氷は、溶けるとさらさらの液体になる
- 食べやすさは、口に入るときの状態で決まる
まずは、最近食べにくそうな料理をひとつ選んで、6つのどれに当てはまるか見てみてください。
※本記事の情報は一般的な工夫です。噛む力や飲み込む力には個人差があります。食事の形や段階については、かかりつけ医・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。
参考:ヘルシーフード株式会社「栄養指導Navi」/日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」

