相談者

「やわらか」と書いてある食品を買ってきたのに、母がほとんど食べませんでした。何を基準に選べばいいのか分かりません。

とり子

パッケージの表示だけでは分からないんです。施設でも、新しい食品はできるだけ職員が試食してから採用するようにしています。ご家庭でも同じことができますよ。

買い物に行けない日や、作る力が残っていない日のために、日もちする食品をそろえておきたい。けれど、いざ出してみると親が食べてくれない——介護のごはんでは、よくあることです。

常備食を選ぶときは、賞味期限の長さだけでなく「本人が食べられるかどうか」を先に確かめる必要があります。そしてそれは、買う前ではなく出す前に、介護する側が一口食べてみることで分かります。

この記事で分かること

  • 常備食を「長持ち」だけで選んではいけない理由
  • 一口食べて確かめる4つのポイント
  • 介護家庭で使いやすい常備食
  • 食べにくさを減らす3つの調整

高齢者施設で働く管理栄養士(JSDR認定士)の私が、現場でやっていることをご家庭向けに翻訳してお伝えします。

結論|常備食は「長持ち」だけで選ばない

常備食は「長持ち」だけで選ばないことを示した図。賞味期限の次に、かたさ・ぱさつき・皮や骨・一食量を見る

保存期間が長い食品でも、親にとって食べにくければ出番はありません。買ったまま期限を迎えて捨てることになれば、費用も手間ももったいないことになります。

賞味期限の次に見る4つ

賞味期限を確認したら、次はかたさ・ぱさつき・皮や骨・一食の量を見ます。この4つは、ほとんどの「食べてくれない」の原因になります。

「やわらかい=誰にでも安全」ではない

やわらかくても、口の中でばらけるものは食べにくいことがあります。また、さらさらした汁と固形物が混ざっているものも、飲み込むタイミングがずれやすく、むせの原因になります。

「やわらか」という表示は、かたさのことしか教えてくれません。飲み込みやすさは別の話です。

施設でも、できるだけ試食してから決めています

とり子

私の施設では、新しい食品を献立に入れる前に業者からサンプルを取り寄せ、給食会議のメンバーができるだけ試食して、かたさと飲み込みやすさを確認してから決めるようにしています

カタログの写真や「やわらか」の表示だけでは分からないからです。プロの現場でも、最後は食べて確かめるようにしています。

ご家庭でも同じことができます。新しい商品を出すときは、まず介護する側が一口食べてみる。それだけで「これは少しかたいかも」「口の中でばらけるな」と気づけます。

一口食べて確かめる4つのポイント

一口食べて確かめる4つのポイント。かたさ、まとまりやすさ、ぱさつき、骨や皮や繊維を示した図

施設の試食で確認しているポイントを、ご家庭用にまとめました。一口食べながら、次の4つを意識してみてください。

見るところ確かめ方
かたさ舌や歯ぐきでつぶせるか。噛み切るのに力がいらないか
まとまりやすさ口の中でばらけないか。飲み込む前に一つにまとまるか
ぱさつき水分が足りず、口の中に貼りつかないか
危ないもの小さな骨、かたい皮、大きな繊維が混ざっていないか

かたさ

歯でしっかり噛まないと飲み込めないものは、疲れて途中で食べるのをやめてしまいます。舌や歯ぐきでつぶせるかを目安にしてください。

まとまりやすさ

ここが一番大事なところです。口の中でばらけるものは要注意です。細かくなった食べ物がのどに散らばると、むせや誤嚥のきっかけになることがあります。

そぼろ状のもの、パラパラした炒り卵、刻んだだけの野菜などが当てはまります。

ぱさつき

水分が少ないものは、口の中や上あごに貼りつきます。パンや芋類、魚のほぐし身などは、飲み込みにくさにつながりやすい食品です。

危ないものが混ざっていないか

魚缶の小さな骨、鶏肉のかたい皮、野菜の大きな繊維。一口目で気づけば、取り除いてから出せます。

介護家庭で使いやすい常備食

介護家庭で使いやすい常備食を、常温で置けるものと冷凍庫に入れておくものに分けて示した図

ここからは、比較的使いやすい常備食を挙げます。ただし、どれも本人に合うかどうかは試してからです。

常温で置けるもの

  • 水煮の魚缶:汁気を調整し、骨や皮を確認して細かくほぐす
  • やわらかい豆のパウチ:スープや煮物に加える
  • 高野豆腐:十分に戻し、だしでやわらかく煮る
  • パックのおかゆ:食欲がない日や、主食を作れない日に

冷凍庫に入れておくもの

  • 冷凍かぼちゃ・里芋:加熱後につぶしやすい
  • 冷凍ほうれん草:汁物や卵とじに少量ずつ使える
  • 冷凍うどん:やわらかくゆでて、短く切る

宅食を常備食として使う手もある

冷凍の宅食をまとめて届けてもらい、使わない日はそのまま冷凍庫に置いておく。これも立派な常備食です。やわらかさの段階が決まっている商品なら、毎回の確認の手間も減ります。

宅食と常備食をどう組み合わせるかは、こちらで詳しく書いています。
→ 宅食と常備食、どちらが便利?介護家庭の負担を減らす使い分け

食べにくさを減らす3つの調整

食べにくさを減らす3つの調整。だしやソースでぱさつきを減らす、スプーンで切れるまで加熱する、食べ切れる量から出す

「少し食べにくそう」と感じたときは、次の3つを試してみてください。買い直さなくても、家にあるもので調整できます。

だしやソースで、ぱさつきを減らす

魚缶のほぐし身や芋類は、だしやとろみのあるソースを合わせるとまとまりやすくなります。マヨネーズを少量混ぜる方法も、まとまりとエネルギーの両方を足せます。

スプーンで切れる程度まで加熱する

冷凍野菜も缶詰も、もう少し加熱すればやわらかくなります。スプーンの縁で切れるかを目安にしてください。

食べ切れる量から出す

一度に多く盛ると、それだけで食べる気がなくなることがあります。少なめに出して、足りなければおかわりする形のほうが、結果的に食べる量は増えます。

こんなときは相談してください

  • 食事中のむせが増えた
  • 食後に声がゴロゴロする
  • 口の中に食べ物が残っている
  • 食事に極端に時間がかかる

食材選びだけで解決しようとせず、主治医・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などにご相談ください。

よくある質問

常備食の選び方についてよくある質問をまとめたバナー

「介護食」と書かれた商品を選べば間違いないですか

やわらかさの目安は分かりますが、本人に合うかどうかは別です。同じ「やわらか」表示でも商品によって食感は違います。やはり一口食べて確かめてください。

試食すると、その分減ってしまいませんか

一口で十分です。かたさとまとまりやすさは、一口目でほとんど分かります。

どのくらいの量をそろえておけばいいですか

まずは3日分から始めてください。多くそろえるより、月に一度普段の食事で使って補充する形のほうが、期限切れを防げます。

親が「缶詰は嫌」と言います

缶詰のまま出さず、ほぐして煮物や卵とじにすると受け入れられることがあります。それでも嫌がる場合は、無理に続けず別の食品に替えてください。

やわらかくすれば、何でも食べられますか

いいえ。やわらかくても口の中でばらけるものは、かえって食べにくくなります。かたさとまとまりやすさは別のものだと考えてください。

飲み込みに不安があるのですが

市販品を自己判断で代用せず、平常時に専門職と「この商品なら使える」を決めておくと安心です。とろみが必要な方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ とろみの濃度、なんとなくで決めていませんか?管理栄養士が教える学会分類2021の3段階と失敗しない作り方

まとめ|出す前に、一口食べる

常備食は「長持ち・簡単・本人が食べやすい」の3つがそろって、はじめて使えるものになります。そして最後の条件だけは、パッケージでは分かりません。

この記事の振り返り

  • 賞味期限の次に、かたさ・ぱさつき・皮や骨・一食量を見る
  • やわらかい=安全ではない。ばらけるものは要注意
  • 出す前に、介護する側が一口食べて確かめる
  • ぱさつきはだしやソース、かたさは加熱で調整できる
  • むせや食べ残しが増えたら、食材選びより先に相談を

次に新しい常備食を開けるときは、まずご自身が一口。それだけで、食卓の失敗はぐっと減ります。

※本記事の情報は一般的な工夫です。食事制限、アレルギー、嚥下状態には個人差があります。むせや食べ残しが増えた場合は、自己判断で様子を見ず、主治医・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。