栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか
食事の量がどんどん減って、栄養が足りているか心配です。でも、これ以上食べさせるのも難しくて。
そんなときの選択肢が「栄養補助食品」です。少ない量で栄養を足せるので、施設でも毎日使っていますよ。
一口、二口で「もういらない」と言われてしまう。作っても残される。食事量が減った方に「もっと食べて」と言っても、量はなかなか増えません。
そんなときに頼れるのが栄養補助食品(ONS)です。食べる量を増やすのではなく、少ない量でエネルギーと栄養を足す——考え方を切り替えると、道が開けます。
この記事で分かること
- 選び方は「ドリンクか、ゼリーか」から
- 嚥下が心配なときの確認のしかた
- 飽きたときの替え方
- 1日何本までか
高齢者施設で日常的にONSを使っている管理栄養士(JSDR認定士)の私が、ご家庭での選び方と使い方をお伝えします。
結論|まず「ドリンクか、ゼリーか」

種類が多くて選べない、という声をよく聞きます。でも、最初に決めることは1つだけです。
栄養補助食品(ONS)とは
少量で高エネルギー・高たんぱくがとれるように作られた食品です。医薬品ではなく食品なので、処方箋なしで、ドラッグストアやネット通販で誰でも買えます。
使い方の基本は、食事を置き換えることではなく食事にプラスすることです。
決めるのは「好み」と「嚥下機能」の2つ
| 比べる点 | ドリンク | ゼリー |
|---|---|---|
| 形 | 飲み物のような液体 | スプーンで食べる |
| 向いている方 | 液体でむせない方 | 液体でむせやすい方 |
| 特徴 | 味の種類が多い | 飲み込みやすい |
- お茶や水でむせることがある方 → まずゼリータイプ
- 液体で問題ない方 → 本人の好みで選んで大丈夫
迷ったら、両方買って選んでもらう
迷ったら両方1個ずつ買って、本人に選んでもらうのが一番です。「自分で選んだもの」は食べてくれる確率が上がります
嚥下が心配なときは「学会分類2021」で確認

飲み込みに不安がある方は、好みだけで選ばないでください。医療・介護の現場では、学会分類2021という共通の基準で、嚥下の状態に合わせた食品の段階が決められています。
ゼリータイプでも、1j対応とは限らない
嚥下調整食1jは、均質でなめらかなゼリー・プリン・ムース状の段階です。栄養補助のゼリーやプリンにも、1j対応のものがあります。
ただし、ここで大事なことがあります。ドリンクタイプは、そもそもこの分類に含まれません。液体だからです。
つまり「栄養補助食品を選べば飲み込みやすい」わけではありません。ゼリータイプの中から、1j対応と確認できたものを選ぶ——この順番です。
同じブランドでも、段階が違う
ここが、いちばん見落とされるところです。同じメーカーの、名前がよく似た商品でも、段階が違います。
| 商品 | 学会分類2021 |
|---|---|
| 明治 メイバランス ブリックゼリー | 1j |
| 明治 メイバランス ソフトJelly | 2-1 |
私の施設で使っているメイバランスのソフトゼリーは2-1です。同じメイバランスでも、ブリックゼリーは1j。名前が似ていても、段階は違います
ブランド名で覚えない。商品ごとに確認する。これが安全な選び方です。
0j・0tは「訓練用」。栄養目的とは役割が違う
ここを混同しないでください。
| コード | 位置づけ |
|---|---|
| 嚥下訓練食品 0j | 重度の方の評価・訓練用のゼリー。たんぱく質含有量が少ない |
| 嚥下訓練食品 0t | 同じく訓練用のとろみ水。たんぱく質含有量が少ない |
| 嚥下調整食 1j | ゼリー・プリン・ムース状。栄養補助ゼリーの多くがここ |
0j・0tは飲み込みの評価や訓練のためのもので、栄養をとることを目的にしていません。だから、たんぱく質が少ないほうがよいとされています。
0j・0tの段階と言われている方へ
訓練の段階にいる方が、自己判断でONSを始めるのは危険です。必ず主治医・言語聴覚士・管理栄養士にご相談ください。
商品がどの段階かは、検索サイトで調べられる
市販商品が学会分類のどの段階に対応しているかは、日本メディカルニュートリション協議会の商品検索サイトで調べられます。商品名やメーカー名で検索できます。
ただし、この検索サイトに載っているのは協議会に加盟している企業の商品だけです。載っていない=対応していない、ではありません。迷ったら、メーカーに直接確認するか、専門職に相談してください。
とろみの段階について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ とろみの濃度、なんとなくで決めていませんか?管理栄養士が教える学会分類2021の3段階と失敗しない作り方
コードの数字は、食べやすさの順位ではない
ここが、いちばん誤解されやすいところです。「1jのほうが2-1より数字が小さいから、飲み込みやすいはず」——そうとは限りません。
学会分類2021の本文には、はっきりこう書かれています。
コード番号は必ずしも、すべての症例で難易度と一致するものではない
意図したコードで作ったものが、付着性や粘性によって、かえって飲み込みにくい形態になっている場合があるとも書かれています。
現場でも同じです。1jのMCTゼリーは飲み込みが悪いのに、2-1のメイバランスソフトゼリーなら食べられる方がいます。数字の順に食べやすいわけではないんです
つまり学会コードは、選ぶときの補助的な目安です。答えではありません。
だから、少量から試す
検索サイトにも「各商品の学会分類2021への対応は、製造販売元企業の責任において提供された情報に基づいており、あくまでも目安です」と書かれています。
同じ1jでも、日清オイリオのエネプリンは硬いと感じます。分類が同じでも、口に入れたときの感じ方は商品ごとに違うんです
分類は、選ぶときの入口としてとても役に立ちます。でも、そこで終わりではありません。新しい商品を出す前に、まずご自身が一口食べてみてください。
「思ったより硬い」「口の中に残る感じがする」——それは、分類表には書かれていない情報です。
いきなり箱買いしない
合うかどうかは、少量を試さないと分かりません。安いからと1種類を箱で買うと、合わなかったときに使い切れず残ります。まず1本ずつ、数種類から始めてください。
飽きるのが普通。替えながら使う

ONSは飽きます。施設でも「最初はよく飲んでいたのに、だんだん残すようになった」は日常茶飯事です。
同じものを続けない
食べが悪くなったら、別の味に替えてください。これは失敗ではなく、ONSの正しい使い方です。
ただし、ドリンクとゼリーの行き来はしません。どちらを使うかは、飲み込みの状態で決まるものだからです。替えるのは味であって、形ではありません。
最初から数種類そろえておく
1種類を箱買いすると、飽きたときに困ります。数種類を少しずつそろえておくと、切り替えがスムーズです。「今日は残した」で落ち込まず、ローテーションで戻ってくればそれで十分です。
市販で買えるONSと、使うときの注意

ドラッグストアやネット通販で買える主な商品です。
| 商品 | タイプ | 学会分類2021 |
|---|---|---|
| 明治 メイバランスMini | ドリンク | —(液体のため対象外) |
| ネスレ アイソカル100 | ドリンク | —(液体のため対象外) |
| 明治 メイバランス ブリックゼリー | ゼリー | 1j |
| 明治 メイバランス ソフトJelly | ゼリー | 2-1 |
| ネスレ アイソカルゼリー ハイカロリー | ゼリー | 1j |
| 森永乳業クリニコ エンジョイMCTゼリー200 | ゼリー | 1j |
| 日清オイリオ エネプリン | プリン | 1j |
※味・規格・エネルギー量は商品によって違います。購入前に公式サイトやパッケージでご確認ください。学会分類の欄は、日本メディカルニュートリション協議会の商品検索サイト(2026年6月現在)で確認したものです。
買い方のコツ
まずはネットで数種類を少しずつ試すのがおすすめです。ネットが使いにくければドラッグストアやスーパーでも買えますが、置いている種類は限られます
味が8種類入っているアソートタイプなら、1箱でいろいろ試せます。どれが口に合うか分からない段階に向いています。
ゼリータイプなら、たとえばこちら。1本から買えるので、試すのに向いています。(学会分類2021では2-1にあたります)
※商品の内容や価格は変わることがあります。購入前に販売ページでご確認ください。どの段階が合うかは人によって違います。まずは少量から試してください。
制限がある方は、始める前に相談を
糖尿病や腎臓病などで食事制限がある方は、自己判断で始めないでください。病態に合わせた専用タイプもあります。かかりつけ医・管理栄養士にご相談ください。
食事が減るなら、飲むタイミングを変える
ONSでお腹がいっぱいになって、食事がさらに減ってしまうことがあります。そのときは食間やおやつの時間にずらしてください。
よくある質問

1日何本までですか
1日1本を目安に始めて、多くても1日3本までにしてください。
医療の現場では、医師が処方する栄養剤を1日3本使うケースもあります。3本は「医療でも使われる上限ライン」だと考えてください。ご家庭では、まず1本から始めて、食事とのバランスを見るのが安心です。
すでに医師から栄養剤をもらっています
市販のONSを勝手に足さないでください。同じ栄養素をとりすぎてしまうことがあります。必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。
食事の代わりにしてもいいですか
基本は「食事にプラス」です。食事がほとんどとれない状態が続く場合は、ONSで様子を見るのではなく、早めに医師・管理栄養士にご相談ください。
値段が高くて、毎日は続けられません
毎日でなくて大丈夫です。「食事量が特に少なかった日だけ」「おやつを1本に置き換え」など、部分的に使うだけでも意味があります。
どれも飲んでくれません
そのままでなく、料理に混ぜる方法もあります。ただし、味や濃度が変わることがあるので、まずご自身で一口試してから出してください。
食事の工夫だけでは足りませんか
ONSの前に、いまの食事のエネルギーを上げる方法もあります。ミキサー食の方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ 【管理栄養士が解説】ミキサー食がまずくなる本当の理由
入院中に栄養補助食品を使っていた方は、退院前に商品名と量を確認しておくと安心です。
→ 退院後の食事、何に気をつける?病院で聞いておきたい5つのこと
認知症で食べる量が減ってきたときの考え方は、こちらも参考にしてください。
→ 認知症の型で食事の困りごとは違う|アルツハイマー型・レビー小体型・血管性
まとめ|少ない量で、しっかり足す
「食べる量を増やす」のが難しくても、少ない量でエネルギーと栄養を足すことはできます。そのための道具がONSです。
この記事の振り返り
- 選び方はまず「ドリンクか、ゼリーか」
- 決め手は「好み」と「嚥下機能」の2つ
- ドリンクタイプは学会分類の対象外。ゼリーでも段階は商品ごとに違う
- 0j・0tは訓練用。栄養目的とは役割が違う
- コードの数字は食べやすさの順位ではない。分類は補助的な目安
- 合うかどうかは少量を試さないと分からない。箱買いしない
- 飽きるのが普通。味を替えながら使う(ドリンクとゼリーは行き来しない)
- 1日1本から、多くても3本まで
低栄養が心配になったら、早めに一本から試してみてください。
→ 高齢者の低栄養とは?家族が見逃しやすい7つのサインと今日からできる改善策
出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」日摂食嚥下リハ会誌 25(2):135-149, 2021
※本記事の情報は一般的な工夫です。食事制限、アレルギー、嚥下状態には個人差があります。むせや食べ残しが増えた場合は、自己判断で様子を見ず、主治医・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

