相談者

母の背中がだんだん丸くなってきました。最近は食事の量も減って、食べたあとに戻してしまうこともあります。

とり子

背中が丸くなると、飲み込みにも胃にも負担がかかりやすくなります。食べる姿勢と量の工夫で、楽に食べられることがありますよ。

年齢とともに背中が丸くなることを「円背(えんぱい)」といいます。見た目の変化だけと思われがちですが、実は毎日の食事にも影響します。むせやすくなったり、食べたものを戻しやすくなったりすることがあるのです。

円背の方の食事は、食べる姿勢と、一回に食べる量を見直すことが大切です。

この記事で分かること

  • 円背だと食事で起こりやすいこと
  • 施設でしている食事の工夫
  • 家でできる姿勢と食べ方のコツ
  • 骨と筋肉を守る食事

高齢者施設で働く管理栄養士の私が、施設で実際にしている工夫をお伝えします。

結論|姿勢と量を見直す

姿勢と量を見直す。椅子とテーブルの高さ、少なめの食事、食後に椅子で休む高齢の方

円背そのものを食事で治すことはできません。けれど、食べる姿勢と量を工夫すれば、飲み込みや胃への負担を軽くできることがあります。まずは、円背が食事にどう影響するのかを知っておきましょう。

円背とは

背骨が前に曲がって、背中が丸くなった状態のことです。骨がもろくなる骨粗しょう症や、背中の筋力が落ちることなどが原因になるといわれています。

飲み込みと胃の両方に影響する

背中が丸いと、座ったときに前かがみになりやすくなります。その姿勢は、のどの通りにも、お腹の中の胃にも負担をかけます。

見直すのは姿勢・量・食後

  1. 姿勢:テーブルの高さを合わせて、前かがみになりすぎないようにする
  2. 量:一回の量を少なくして、無理に食べさせない
  3. 食後:食べてすぐ横にならない

円背だと食事で起こりやすいこと

背中が丸いと前を見ようとしてあごが上がり、お腹が押される姿勢を横から見たイラスト

円背の方の食事で起こりやすいことは、大きく3つあります。どれも本人の努力不足ではなく、体の形の変化によるものです。「食べない」「残す」と感じたときは、まずこの3つを思い出してください。

前かがみで飲み込みにくい

背中が丸いと、体が前かがみになり、顔が下を向きます。それでも前にある食事を見ようとして、首を後ろにそらすため、あごが上がりやすくなります。あごが上がると、のどが伸びて、飲み込むタイミングが合いにくくなり、むせやすくなります。
→ 親が食事中にむせる|家族が見る5つの観察ポイント

胃が押されて戻しやすい

背中が丸くなると、お腹が圧迫されて、胃が押された状態になります。食べたものが胃から逆流しやすくなり、胸やけや、吐いてしまうことにつながることがあります。

一度にたくさん食べられない

胃が押されているので、少し食べただけでお腹がいっぱいに感じやすくなります。食べる量が減ると、体重が落ちていくこともあります。
→ 食べてるのに低栄養と言われたら|原因と体重での確かめ方

施設でしている円背の方の食事の工夫

施設の食堂で介護スタッフが入居者に合わせてテーブルの高さを調整している

施設では、円背の方が少しでも楽に食べられるよう、姿勢と量の両方に気を配っています。食べる姿勢の調整は、毎日そばで食事を見ているフロアの介護スタッフが担当しています。ここでは、施設で実際にしている工夫を紹介します。

テーブルの高さを合わせる

テーブルが高すぎると、腕を上げて食べることになり、あごが上がりやすくなります。低すぎると、さらに前かがみになってしまいます。施設では、その方の体に合わせてテーブルの高さを変えています。

食事の姿勢の整え方は、「POTTプログラム」のサイトでも紹介されています。POTTとは、「ポジショニングで(PO)、食べるよろこびを(T)伝える(T)プログラム」の略です。
→ 誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承(POTTプロジェクト)

前かがみになりすぎないよう見守る

円背の方は、食べているうちにだんだん前かがみになっていきます。フロアの介護スタッフが、食事中の姿勢に気をつけて見守っています。

少量ずつ、無理に食べさせない

とり子

吐いてしまうことがある方には、少量ずつにして、無理に食べさせないようにしています。

「残さず食べてほしい」という気持ちは分かります。けれど、胃が苦しいときに無理に食べると、かえって吐いてしまうことがあります。食べられる分だけで大丈夫です。

家でできる円背の方の食事のコツ

座面にクッションを敷き、足の裏が床について食事をする高齢の方

施設でしている工夫は、家でも取り入れられます。特別な道具がなくても、身近なもので工夫できることがあります。できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。

椅子とテーブルの高さを合わせる

足の裏が床につく椅子に座り、テーブルに肘を楽に置ける高さにします。テーブルが高いときは、座面にクッションを敷いて調整する方法もあります。合わせ方に迷ったら、ケアマネジャーや、訪問リハビリの理学療法士・作業療法士に相談してみてください。

回数を分けて少しずつ

一度にたくさん食べられないときは、1回の量を少なくして、10時や15時のおやつで補います。少ない量でエネルギーやたんぱく質をとれる栄養補助食品を使うのもひとつの方法です。
→ 栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか

食べてすぐ横にならない

食べてすぐ横になると、食べたものが逆流しやすくなります。食後しばらくは、座ったまま過ごしてもらいましょう。

骨と筋肉を守る食事

牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、豆腐、納豆、小松菜、鮭、きのこ、卵など骨と筋肉を守る食品

円背の原因のひとつに、骨がもろくなることや筋力が落ちることがあります。骨と筋肉を守る食事を続けることは、元気に食べ続けるための土台になります。意識したい栄養素は3つです。

筋肉のもとになるたんぱく質

魚・肉・卵・牛乳・大豆製品を、毎食ひとつ入れましょう。背中を支える筋肉を保つためにも大切です。

骨のもとになるカルシウム

牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、骨ごと食べられる小魚や魚の缶詰、豆腐や納豆、小松菜などに多く含まれます。
→ 缶詰でたんぱく質を補う|高齢の親と食べる簡単アレンジ

カルシウムを助けるビタミンD

ビタミンDは、カルシウムが体に取り込まれるのを助けます。鮭やさんまなどの魚、きのこ類に多く含まれます。日光に当たることでも、体の中でつくられます。

よくある質問

食べたあとに吐いてしまいます

一回の量を減らし、食後すぐ横にならないようにしてみてください。吐くことが続く、食べられない日が続く、体重が減ってきたときは、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

背もたれにもたれると楽そうです

もたれすぎて体が後ろに倒れると、あごが上がってむせやすくなることがあります。その方に合った姿勢は、理学療法士や作業療法士に確認すると安心です。

むせることも増えてきました

水分でむせる方は、とろみをつけると飲みやすくなることがあります。とろみの濃さは専門職に確認してください。
→ とろみの濃度、なんとなくで決めていませんか|3段階の目安と作り方

食事の量が減って体重が心配です

月に1回、体重を量ってみてください。1か月で5%以上減っているときは、かかりつけ医や管理栄養士に相談しましょう。
→ 最近、親が痩せてきた|放置してはいけない理由と体重の見方

骨のためにサプリメントを飲ませた方がいいですか

まずは食事から、と考えてください。骨粗しょう症の治療をしている方や、薬を飲んでいる方は、サプリメントを使う前に主治医に確認しましょう。

まとめ|姿勢と量で楽に食べる

円背の方の食事は、体の形に合わせた工夫で、楽に食べられることがあります。姿勢・量・食後の3つを見直すことから始めましょう。

この記事の振り返り

  • 円背だと、飲み込みにくさと胃の圧迫が起こりやすい
  • テーブルの高さを合わせ、前かがみになりすぎないようにする
  • 一回の量を少なくして、無理に食べさせない
  • 食べてすぐ横にならない
  • たんぱく質・カルシウム・ビタミンDで骨と筋肉を守る

次の食事では、親が座ったときのテーブルの高さを、横から見てみてください。

※本記事の情報は一般的な工夫です。体の状態には個人差があります。吐く、むせるなどの症状が続くときは、かかりつけ医・管理栄養士・言語聴覚士・理学療法士などにご相談ください。

ABOUT ME
アバター画像
とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。