相談者

母は毎食きれいに完食しています。それなのに「低栄養です」と言われました。どういうことでしょうか。

とり子

よくあるご相談です。完食していても、出している量が少なければ足りません。まず、どれくらい出しているかを確かめてみましょう。

きちんと食べているのに、痩せていく。検査の数値が悪いと言われる。何が足りないのか分からない。

この記事では、その理由をお伝えします。結論から言うと、「食べている」と「足りている」は別のことです。

この記事で分かること

  • 「完食」と「足りている」が違う理由
  • 本当に足りているか確かめる方法
  • 量を増やせないときの手立て
  • 相談したほうがよいタイミング

高齢者施設で働く管理栄養士(JSDR認定士)の私が、現場で見ていることをお伝えします。

結論|「完食」は「足りている」ではない

「完食」は「足りている」ではないことを示した図。出した食事と完食した空の器の対比

家族が見ているのは「残したかどうか」

「今日は全部食べた」「今日は半分残した」。ご家族が気にするのは、たいてい残したかどうかです。

完食すれば安心しますし、残せば心配になります。自然なことです。

でも大事なのは「どれだけ出したか」

ここが落とし穴です。出している量が少なければ、完食しても足りません。

「食が細くなったから」と少なめに盛る。残されるのがつらいから、はじめから減らす。そうやって出す量が少しずつ減っていくことがあります。

本人は毎回完食しているので、誰も気づきません。

施設と家庭では、事情が違います

参考までに、施設ではどれくらい出しているかをお伝えします。

主食1食あたり1日の合計
全粥230gおよそ1,200kcal
米飯140gおよそ1,500kcal

米飯140gは、茶碗に軽く1杯ほどです。ご家庭で出している量と比べて、どうでしょうか。

とり子

施設では一定量をお出ししています。それでも低栄養になる方はいますが、その場合は「出した量を食べきれない」ことが原因です

つまり、同じ「量が足りない」でも中身が違います。

場所起きていること
施設一定量を出しているが、食べきれずに残る
ご家庭出している量が少ないことに気づいていない

ご家庭では、完食しているぶん「足りている」と思い込みやすくなります。まず、出している量を確かめてみてください。

足りているかは、体重で分かる

足りているかは体重で分かる。体重計に立って測り、カレンダーに記録する様子

必要な量は、体格も活動量も持病も違うので、一律には言えません。でも、足りているかどうかは、体重を見れば分かります。

体重が減っていれば、足りていない

とてもはっきりした話です。体重が減り続けているなら、食べている量が足りていません。完食していても、です。

介護の現場でも、低栄養のリスクを見るときは体重の減り方を必ず確認します。

逆に、体重が保てているなら、今の量で足りているということです。

測り方は「同じ条件で、月に一度」

  • 同じ曜日、同じ時間に測る(朝がおすすめ)
  • 同じ服装で測る
  • 毎日でなくていい。月に一度で十分
  • カレンダーに数字を書くだけでいい

毎日測ると、日々の増減に振り回されます。施設でも月に1回の測定が基本です。

ただし、体重が減ってきている、むくみがあるといった心配があるときは、週に1回に増やします。施設でも、看護師の判断でそうすることがあります。

この減り方なら、すぐ相談を

介護の現場では、体重が何%減ったかでリスクを判断します。国が示している基準がこちらです。

期間気をつけたいすぐ相談
1か月3〜5%未満の減少5%以上
3か月3〜7.5%未満の減少7.5%以上
6か月3〜10%未満の減少10%以上

キロ数ではなく%で見るのがポイントです。同じ2kgでも、体重40kgの方と70kgの方では意味がまったく違うからです。

計算のしかた

(前の体重 − 今の体重)÷ 前の体重 × 100

例:1か月前が50kg、今が47.5kgなら
(50 − 47.5)÷ 50 × 100 = 5% → すぐ相談する段階です

体重が減っているときは、ほかにもサインが出ていることがあります。
→ 高齢者の低栄養とは?家族が見逃しやすい7つのサインと今日からできる改善策

「出す量」を見直してみる

出す量を見直す。食事を写真に撮り、ごはんを量って確かめる様子

体重が減っているなら、出す量を見直します。とはいえ、急に山盛りにしても食べられません。

まず、1食分を写真に撮る

今どれくらい出しているか、意外と把握できていないものです。1日分、スマホで撮ってみてください。

並べて見ると「思ったより少ない」と気づくことがあります。相談に行くときにも、そのまま見せられます。

回数を増やす

1回に食べられる量が決まっているなら、回数を増やすほうが確実です。3食にこだわらず、間に一口足す形を考えてください。

  • 10時と15時に、小さなおやつを足す
  • 寝る前に、温かい飲み物を一杯
  • 食後すぐでなく、少し時間をおいてから足す

エネルギーを足せるものを加える

量を増やせないときは、同じ量でエネルギーを増やします。油や卵を少し加えるだけで変わります。

  • 汁物や和え物に、マヨネーズや油を少量加える
  • おかゆに卵を落とす
  • 牛乳やチーズを料理に使う

それでも足りないときは、栄養補助食品という方法もあります。
→ 【管理栄養士が解説】栄養補助食品(ONS)の選び方

量以外の原因もある

量以外の原因。ごはんと汁物は出ているのに、焼き魚に手をつけずに残している食卓

いちばん多いのは量の不足ですが、それだけではありません。

中身が主食に偏っている

ごはんと漬物、麺類だけ——量は食べていても、たんぱく質が足りていないことがあります。肉・魚・卵・大豆製品を残していないか、見てみてください。

必要な量が増えている

けがや床ずれ、発熱が続いているときは、普段より多く必要になります。同じ量では足りなくなります。

飲み込みにくくて残している

食べにくいものだけ残していると、結果的に食べる量が減ります。むせていないか、時間がかかっていないかも見てください。
→ 【管理栄養士が解説】親が食事中にむせる|家族が見る5つの観察ポイント

よくある質問

低栄養についてよくある質問をまとめたバナー

高齢だから少なくていいのでは

活動量が減れば必要な量も減りますが、体重が減り続けているなら足りていません。年齢ではなく、体重で判断してください。

本人が「お腹いっぱい」と言います

満腹感は当てになりません。一度に入る量が減っているだけのこともあります。回数を増やす方向で考えてください。

体重計に乗るのを嫌がります

無理に測らなくても、変化は分かります。指輪がゆるくなった、ベルトの穴が変わった、顔つきが変わった——こうした変化も立派な情報です。

どれくらい食べれば足りますか

必要な量は、体格・活動量・持病によって変わります。数字で決めるより、体重が保てているかを見るほうが確実です。具体的な量は、管理栄養士にご相談ください。

無理に食べさせるべきですか

無理強いはしないでください。食事の時間が苦痛になると、かえって食べなくなります。回数を増やす、エネルギーを足せるものを加えるほうが続きます。

どこに相談すればいいですか

かかりつけ医、担当のケアマネジャー、地域包括支援センターへ。管理栄養士による訪問栄養指導を利用できる場合もあります。体重の記録と食事の写真を持っていくと、話が早く進みます。

一人暮らしの親は、食事がひとりになりがちです。誰かと食べる時間も、元気を保つ助けになります。
→ 「ひとりで食べない」がフレイル予防に|地域の集まりで見た食を楽しむ工夫

背中が丸い方は、胃が押されて一度にたくさん食べられないことがあります。
→ 背中が丸い親の食事で気をつけること|円背の方の姿勢と食べ方

認知症の親が食べない理由は、型によって違うことがあります。
→ 認知症の型で食事の困りごとは違う|アルツハイマー型・レビー小体型・血管性

唾液や消化液が減るなど、食べる量に影響する体の変化はこちらです。
→ 高齢者のからだの変化と食事|口・のど・胃腸・五感で起きること

体重が何%減ったかと、食べた量を記録できる「体重・食事量の記録表」を、無料でダウンロードできます。

体重・食事量の記録表 無料ダウンロード

まとめ|まず、出している量を見る

「食べているのに」と悩んだときは、食べたかどうかではなく出している量と、体重を見てください。そこに答えがあります。

この記事の振り返り

  • 完食していても、出す量が少なければ足りない
  • 施設は一定量を出している。家庭は出す量に気づきにくい
  • 足りているかは、体重の減り方(%)で分かる
  • 同じ条件で、月に一度。心配なときは週に一度
  • 量を増やせないときは、回数を増やすか、エネルギーを足せるものを加える

今日の夕食で、ごはんを量ってみる。それだけで、見えてくることがあります。

出典:厚生労働省「栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング(施設)(様式例)」低栄養状態のリスクの判断

※本記事の情報は一般的な工夫です。食事制限、アレルギー、嚥下状態には個人差があります。体重が減っている場合は、自己判断で様子を見ず、主治医・管理栄養士などにご相談ください。

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。