高齢者の肉料理をやわらかくするコツ|部位・切り方・下ごしらえと施設の工夫
父が、肉はかたいと言って残すようになりました。たんぱく質をとってほしいのですが、どうすればやわらかくなりますか。
肉は、選び方と下ごしらえで、ぐっとやわらかくなります。施設で実際にしている工夫も紹介しますね。
肉は、筋肉のもとになるたんぱく質がとれる大切な食べ物です。けれど、噛む力が落ちてくると、かたくて食べにくい食材の代表にもなります。「肉はもういらない」と言われると、栄養が心配になりますよね。
肉は、部位・切り方・下ごしらえ・加熱の4つを工夫すると、やわらかく食べやすくなります。
この記事で分かること
- 肉がかたくなる理由
- 肉をやわらかくする4つのポイント
- 施設でしている肉料理の工夫
- 食べにくい肉料理と、食事の形ごとの出し方
高齢者施設で働く管理栄養士の私が、施設での工夫もあわせてお伝えします。
結論|部位・切り方・下ごしらえ・加熱

肉がかたくなるのには、理由があります。理由が分かれば、どこを工夫すればいいかが見えてきます。まずは、かたくなる理由と、やわらかくするポイントの全体を見てみましょう。
肉がかたくなる理由
肉には、筋や繊維があります。脂の少ない部位は、加熱すると縮んでかたくなり、ぱさつきやすくなります。焼きすぎたり、冷めたりすると、さらにかたくなります。
やわらかくする4つのポイント
- 部位:脂のある部位や、ひき肉・薄切りを選ぶ
- 切り方:繊維を断つように切る、筋を切る
- 下ごしらえ:やわらかくする食材や調味料に漬ける
- 加熱:加熱しすぎない、煮込む、あんでまとめる
施設でもかたさに気を配っている
施設でも、肉や魚のかたさには気を配っています。家でもできる工夫が多いので、次の章から順番に紹介します。
肉をやわらかくする4つのポイント

4つのポイントを、ひとつずつ見ていきましょう。全部を一度にしなくても大丈夫です。できそうなものから取り入れてみてください。
部位を選ぶ
脂の少ない部位は、加熱するとかたくなりやすくなります。こま切れやバラなど脂のある部位、ひき肉、薄切りを選ぶと、やわらかく仕上がりやすくなります。
ただし、脂の多い部位は、同じ量でもたんぱく質が少なめです。やわらかさだけでなく、たんぱく質の量も考えて、部位を組み合わせましょう。
| 部位(生・100gあたり) | たんぱく質 |
|---|---|
| 豚もも(脂身つき) | 20.5g |
| 豚ロース(脂身つき) | 19.3g |
| 豚バラ(脂身つき) | 14.4g |
| 鶏むね(皮つき) | 21.3g |
| 鶏もも(皮つき) | 16.6g |
施設では、豚肉はこま切れ肉だけでなく、バラ肉も入れています。
繊維を断つように切る
肉の繊維に対して直角に切ると、噛み切りやすくなります。筋のある部分は、包丁で切れ目を入れておきましょう。厚みのある肉は、たたいて薄くするのも効果的です。
やわらかくする調味料に漬ける
施設では、ロース肉や魚には、味の素の「献立さん やわらかアップ お肉・お魚用」を使っています。酵素などの力で、肉や魚をやわらかくする下ごしらえ用の調味料です。
使う量の目安は、肉100gに対して製品3gを、水または調味液20gに溶かし、冷蔵庫で60分ほど漬けてから、ふつうに調理します。業務用の500g入りなので、家庭では量が多めです。使うときは、パッケージの表示を確かめてください。
施設では、豚や牛のバラ肉には使っていません。脂の層が多くて薄いバラ肉は、漬けると赤身と脂身をつないでいる部分がゆるみ、加熱で脂が溶け出して、肉が細かく崩れやすくなるためです。薄切り肉にたくさん使ったり、長く漬けすぎたり、強く煮込んだりしても、崩れやすくなります。
※手元に調味料がないときは、すりおろした玉ねぎに漬けておく方法もあります。肉がやわらかくなりやすいといわれています。
加熱しすぎない
肉は、焼きすぎると縮んでかたくなります。片栗粉を薄くまぶしてから加熱すると、表面がつるんとして、水分が逃げにくくなります。片栗粉と溶き卵をまぶして焼く「ピカタ」も、卵が肉を包むので、やわらかく仕上がります。煮込んだり、あんをかけたりすると、しっとりと食べやすくなります。
→ やわらかく飲み込みやすい高齢者の食事|献立の考え方と施設の1日の例
食べにくい肉料理と出し方の工夫

同じ肉料理でも、料理の種類によって食べにくさは変わります。施設で食べにくそうにしている料理と、出すときの工夫を紹介します。
唐揚げは冷めるとかたい
唐揚げは人気のおかずですが、冷めるとかたくなり、食べにくそうにしている方がいます。施設では、唐揚げにたれをかけた油淋鶏(ユーリンチー)のようにして出すこともあります。温かいうちに出す、一口大に小さく切る、といった工夫もおすすめです。
フライは角を切る
アジフライなどのフライは、尻尾の先だけでなく、まわりの角(はし)もかたくなりやすい部分です。施設では、角をすべて切り落として出しています。家でも、かたい角は取り除いてから出しましょう。
牛肉はかたくなりやすい
牛肉は、かたさが残りやすい肉です。施設で使う牛肉は、やわらかくなるように処理されたものですが、それでもかたくなりやすく、出すのは月に1回ほどです。
施設では、牛肉にもやわらかくする調味料は使っていません。牛肉は、薄切りを選ぶ、煮込む、ひき肉を使うなど、かたくなりにくい形にするのがおすすめです。
食事の形ごとの肉の出し方

噛む力や飲み込む力に合わせて、肉料理の出し方を変えます。施設では、同じ肉料理を、食事の形に合わせて作り分けています。
一口大・きざみ
やわらかく仕上げた肉を、一口大や細かく切って出します。きざんだ肉はばらけやすいので、あんやソースでまとめてください。
極きざみ・ミキサー食
ミキサーにかけるときは、水分を足さないとうまく回りません。施設では、水ではなく煮汁などを足して、味が薄まらないように工夫しています。
→ ミキサー食がまずくなる本当の理由|水ではなく煮汁を使う
市販品を組み合わせる
毎回手作りが大変なときは、やわらかく作られた市販の介護食を使うのもひとつの方法です。
→ ユニバーサルデザインフードとは?4つの区分と市販の介護食の選び方
よくある質問

とり肉はどの部位がいいですか
むね肉より、脂のあるもも肉の方がしっとりしやすくなります。むね肉を使うときは、片栗粉をまぶしてから加熱すると、ぱさつきにくくなります。
ひき肉なら安心ですか
ひき肉は、そぼろにすると口の中でばらけやすくなります。肉だんごやハンバーグにしたり、あんでまとめたりしてください。
→ 高齢の親が食べにくい料理とは?6つの特徴と家でできる工夫
脂の多い肉は体に悪くないですか
食べる量が減っている方には、脂はエネルギーをとる助けにもなります。持病で食事の制限がある方は、主治医の指示に従ってください。
肉を食べてくれないときは
魚・卵・豆腐・牛乳など、ほかの食品でもたんぱく質はとれます。肉にこだわらず、食べやすいものから選んでください。
→ 缶詰でたんぱく質を補う|高齢の親と食べる簡単アレンジ
圧力鍋は使えますか
使えます。煮込み料理が短い時間でやわらかく仕上がります。ただし、煮込みすぎると、ぱさつく部位もあるので気をつけてください。
まとめ|肉を選んで下ごしらえで工夫を

肉は、ちょっとした工夫でやわらかくなります。部位・切り方・下ごしらえ・加熱の4つを見直して、肉料理を食卓に残しましょう。
この記事の振り返り
- 脂のある部位や、こま切れ・薄切り・ひき肉を選ぶ
- 繊維を断つように切り、筋を切る
- やわらかくする調味料や食材に漬ける
- 唐揚げは温かいうちに、たれをかけて。フライのかたい角はすべて切る
- ミキサーは煮汁で伸ばして味を薄めない
次に肉を買うときは、こま切れやバラなど、脂のある部位を選んでみてください。
※本記事の情報は一般的な工夫です。噛む力や飲み込む力、食事制限には個人差があります。食事の形については、かかりつけ医・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

