相談者

母が最近、出した料理を残すようになりました。何なら喜んで食べてくれるのでしょうか。

とり子

好きなものは、食べる力になります。施設で人気のメニューや、好みが分かれるものを紹介しますね。

栄養のことを考えて作った料理を残されると、がっかりしてしまいますよね。けれど、高齢になると、体の変化とともに好みも変わっていきます。「何を食べてほしいか」だけでなく、「何なら食べたいか」から考えると、食卓がぐっと楽になります。

献立に迷ったら、親の「好き」を手がかりにするのがおすすめです。

この記事で分かること

  • 施設で好まれている食事
  • 好みが分かれる・苦手になりやすい食事
  • 好きなものを食べやすく出す工夫
  • 「思い出の味」を出すときに気をつけたいこと

高齢者施設で献立の確認や行事食の提案をしている管理栄養士の私が、施設での様子をお伝えします。

結論|好きなものは食べる力になる

好きな料理を前に笑顔になる高齢の方

同じ量でも、好きなものなら自然と箸が進みます。食べる量が減ってきた親には、まず好きなものから出してみることも大切です。好みは人それぞれなので、親の様子をよく見ることから始めましょう。

好きなものは箸が進む

食欲が落ちているときでも、好きなものなら少し食べられることがあります。食べる量が増えれば、栄養もとりやすくなります。

好みは人それぞれ

施設でも、同じ料理を喜ぶ方もいれば、まったく手をつけない方もいます。「高齢者はこれが好き」と決めつけず、親の好みを知ることが大切です。

好みの変化には体の理由もある

年齢とともに、甘味や塩味を感じにくくなったり、噛む力が落ちたりします。好みが変わったように見えるのは、こうした体の変化が関係していることもあります。
→ 高齢者のからだの変化と食事|口・のど・胃腸・五感で起きること

施設で好まれている食事

施設で好まれている食事。うどんと、いなり寿司・ちらし寿司

施設で特に好まれているのは、麺類とお寿司です。どちらも、なじみがあって、食べるのが楽しみになる料理です。行事の日のお祝いの膳も、毎回楽しみにされています。

麺類は月3回の人気メニュー

とり子

私が入職したころは、献立に麺類が入っていませんでした。給食会議で入居者さんから希望があり、月2回から始めて、今は月3回出しています。

ただ、パスタは麺がかたく、食べにくいようです。そのため、施設ではパスタ以外の麺を出しています。家で出すときも、うどんやそうめんなど、やわらかくゆでやすい麺がおすすめです。

お寿司はいろいろな形で

お寿司も人気です。施設では、いなり寿司、ちらし寿司、薄焼き卵で巻いた卵巻き寿司などを出しています。のりは口の中にはりつきやすいので、施設では刻みのりしか使いません。巻き寿司は、のりの代わりに卵で巻いています。

花柄の大皿に盛った握り寿司、卵焼き、いなり寿司

節分には、卵巻き寿司とちらし寿司を組み合わせて出したこともあります。

節分の献立。薄焼き卵で巻いた巻き寿司とちらし寿司

行事の日のお祝いの膳

敬老会では、お赤飯、焼き魚、天ぷら、煮物などを重箱に詰めたお祝いの膳を出しています。天ぷらは、煮た方が食べやすいのですが、お祝いの日は見ても楽しんでもらえるよう、天ぷらのまま出しています。器や盛りつけを変えるだけでも、特別な日の気分を楽しめます。食事の形がやわらかい方には、同じ献立をそれぞれの形に合わせて作っています。
→ ハロウィンのおやつは市販のかぼちゃプリンで|飲み込みに不安がある親とも楽しむ飾りつけ

敬老会のお祝いの膳。お赤飯、焼き魚、天ぷら、煮物などを詰めた重箱

好みが分かれる・苦手になりやすい食事

好みが分かれるデザート、ネバネバしたとろろとオクラに箸が止まる様子、薄味の汁物

人気のメニューがある一方で、好みがはっきり分かれるものや、残されやすいものもあります。施設で感じている3つを紹介します。

甘いものは好みが分かれる

施設では、毎日の昼食に、果物や果物の缶詰、ゼリー、プリン、ババロアなどのデザートをつけています。デザートだけは食べるという方がいる一方で、「食事に甘いものはいらない」という方もいます。甘いものは、好みがはっきり分かれます。

ネバネバしたもの

とろろやオクラなど、ネバネバしたものは苦手な方が多い食べ物です。体によいイメージがあっても、無理にすすめる必要はありません。

味の薄いもの

味を感じにくくなっているため、薄味の料理は「おいしくない」と感じて残されやすくなります。塩を増やす前に、だしのうま味や、ゆず・しそなどの香りを生かしてみてください。
→ 高齢の親が食べにくい料理とは?6つの特徴と家でできる工夫

好きなものを食べやすく出す工夫

家族が親に今度は何が食べたいか聞いている場面

好きな料理でも、噛む力や飲み込む力が落ちると食べにくくなることがあります。好きなものを、今の体に合わせて出す工夫を紹介します。

好きな料理を食事の形に合わせる

家でミキサー食にするなら、天ぷらは素材と天かす・天つゆを一緒にミキサーにかけると、揚げる手間なく天ぷらの風味を楽しめます。ほかにも、麺は短く切ってやわらかくゆでる、お寿司は卵で巻く、など、好きな料理を今の食事の形に合わせて出します。
→ やわらかく飲み込みやすい高齢者の食事|献立の考え方と施設の1日の例

思い出の味は少量から

とり子

ふるさとの「おやき」が食べたいと言われた入居者さんがいて、おやき風のおやつを作りました。かぼちゃを片栗粉でまとめて焼き、あんをのせたものです。でも、冷めるとかたくなり、見た目も思い出のおやきと違ったようで、「違う」と言われてしまいました。

思い出の味は、気持ちを明るくしてくれるものです。ただ、思い出の中の味や見た目と違うと、がっかりさせてしまうこともあります。どんな見た目だったか、どんな味だったかを本人に聞いてから作ると、近づけやすくなります。冷めるとかたくなるものは、温かいうちに出しましょう。

本人の声を聞く

施設の麺類のように、本人の希望から献立が変わることもあります。「今度は何が食べたい?」と聞いてみることが、食べる楽しみを増やすきっかけになります。

よくある質問

高齢者が好む食事・苦手な食事についてよくある質問のバナー

甘いものしか食べません

食べられるものがあることは大切です。食事の量が減って心配なときは、少ない量で栄養をとれる栄養補助食品も使えます。
→ 栄養補助食品(ONS)の選び方|ドリンクかゼリーか

パスタは食べさせない方がいいですか

よく噛める方なら、やわらかめにゆでれば楽しめます。噛みにくそうなときは、うどんやそうめんに変えてみてください。

好きなものばかりで栄養がかたよりませんか

好きなものに、たんぱく質を足すと安心です。麺に卵やとり肉をのせる、お寿司に卵焼きを添える、といった工夫があります。

思い出の料理を作ったのに食べてくれません

今の体では食べにくかったのかもしれません。やわらかさや大きさを変えて、少しずつ試してみてください。

お祝いの日の食事はどうすればいいですか

器や盛りつけを変えるだけでも、特別な日を楽しめます。お正月の楽しみ方はこちらも参考にしてください。
→ 高齢者に餅を出していい?お正月に安全に楽しむ方法

まとめ|「好き」を手がかりに献立を

家族そろって麺やお寿司を囲む笑顔の食卓

好みは人それぞれで、年齢とともに変わっていきます。親の「好き」を知ることが、食べる力を引き出す近道です。

この記事の振り返り

  • 施設では、麺類とお寿司が人気
  • パスタはかたくて食べにくいことがある
  • 甘いものは好みが分かれる。ネバネバ・薄味は苦手な方が多い
  • 好きな料理を、今の食事の形に合わせて出す
  • 思い出の味は少量から。本人の声を聞く

次の食事の前に、「今度は何が食べたい?」と親に聞いてみてください。

※本記事の情報は一般的な内容です。噛む力や飲み込む力、食事制限には個人差があります。食事の形については、かかりつけ医・管理栄養士・言語聴覚士などにご相談ください。

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とり子
高齢者施設で働く管理栄養士です。 日々の現場では、ご家族から食事量の低下やむせ、介護食の悩みについて相談を受けることがあります。 頑張って手作りしているからこそ、つらくなる…そんなご家族に、少しでも力を抜いてもらえる情報を届けたい。 JSDR認定士として、専門知識と現場の経験を、優しく分かりやすくお伝えします。